「欧州の閉塞感を感じる」希望のかなた よしたださんの映画レビュー(感想・評価)
欧州の閉塞感を感じる
「欧州難民」三部作の前作「ル・アーヴルの靴みがき」に比べると、欧州に来る難民の状況がさらにひっ迫していることを感じさせる。
画面は暗く、暴力の描写が多い。と言っても、そこはアキ・カウリスマキ。暴力とはいっても、人間の哀しさと滑稽さを滲ませた行為として描かれている。
画面の暗さも、物語の舞台がフランスの海辺の町からフィンランドへ移ってきたこともあるのかも知れない。
だが、妹との再会を果たしたシリア人の青年は、一体あのあとどうなるというのか。
偽造した身分証では病院で治療を受けることも出来ないだろう。
何となくハッピーエンドに見えるが、この兄妹の置かれた状況を注意深く観察すれば、彼らの未来が決して楽観できるものではないことが分かる。
救いがないのは、彼らを助けた親切なフィンランドの人々も同じである。買い取ったレストランが繁盛する保証などなく、難民でなくても生活の糧を得ることは簡単ではない。
別れたアル中の妻とやり直すことが唯一の救いであろうか。貧しいながらも家族が同じところで生きていけることへのありがたさを感じさせるラストだった。
色彩と照明の演出がとても素晴らしかった。
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