劇場公開日 2018年1月27日

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「暗黒の平屋1階建」ダークタワー 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)

2.5暗黒の平屋1階建

2018年2月3日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

単純

興奮

スティーヴン・キング原作ファンを名乗っていながら
誠にお恥ずかしい限りですが、『暗黒の塔』シリーズ
全7部中3部までしか読み終えてない野郎のレビューです。
ファンの皆様、そしてキング先生、お許しください……。
今かれこれ10年振りに再読中ですから……。

という立場でのレビューなのでどこまで書けたものかだが、
まず言えるのは「これ1本で完結!?」と唖然とした事。
原作読破した弟曰く「原作の流れとは全く違う」
そうなので一応安堵はしているのだけれど。

...

映画版のあらすじ。
幾つもの次元に分かれたこの宇宙の中心には原初から
〝塔”が存在し、その〝塔”は宇宙の周りを覆う
闇と火から宇宙を保護する役割を持っている。
その〝塔”を破壊する力を秘めた少年を巡り、
〝塔”を破壊しようとする魔道士ウォルターと、
〝塔”の守護者である最後のガンスリンガー、
ローランドとの対決が繰り広げられる。

この時点で原作の内容がかなり簡略化されていると
気付く方もおられるだろうが、そこは後述として
まず映画単体としてのレビューを書く。

良い点。
鮮烈とまでは言わないが悪くないビジュアルで
描かれたダークファンタジーな世界観、そして
主演陣の演技とクライマックスのアクション。
ローランド役イドリス・アルバはハードで渋いし
ジェイク役トム・テイラーも子役ながら良い演技。
何よりウォルター役マシュー・マコノヒーは◎!
細身をダークスーツに包み、若くも老いても見える彼。
人を玩具のように壊す、さらりとした残忍さが見事。

クライマックスの大銃撃戦&一騎討ちは、
アクション映画として純粋にカッチョイイ。
リボルバーの弾丸を放り投げて空中で再装填し、
跳び撃ち・跳弾・爆破と何でもござれの二挺拳銃無双!
無数の弾丸を平然と防ぎ続けるウォルターの化け物
じみた強さも相俟って、かなり熱い対決シーンだった。

とはいえ、
西部開拓時代のような世界と現代N.Y.を行き来するだけで
終わる物語では、あらすじのような壮大な世界観を表すには
かなり無理があるしオリジナリティも感じづらい。
単純にロケーションや画の壮大さが不足しているし、
“塔”を破壊する方法のあっけなさ(“塔”脆すぎない?)、
敵やモンスターの少なさと印象の薄さなどなど、
土地的にも物量的にもこじんまりしてる印象。

...

ここからは原作を(中途半端に)読んだ身として書く。

まず、原作『暗黒の塔』シリーズはキング自身が
自らのライフワークと語り、第1章の発表から
完結までに22年もの歳月を要した超大作である。
(角川文庫版の場合)文庫本にして全14巻、
総頁数約7400という大大大ボリューム作品である。
3部作ならまだしもそれを95分でやるってあぁた、
そりゃ無理っすよ。単純計算で1ページ0.8秒っすよ。

登場しないキャラやエピソードは山ほどある。
そこを「時間の都合上仕方ない」と百万歩
譲るにしても、やはりこんなにも狭い世界観に
落とし込まれてしまった点は残念至極。

うまく言い表すのが難しいのだが、原作は、
表面的には人間対人間のミニマムなスケールで物語を
展開させながらも、そこに宇宙の理を揺るがすような
マキシマムなスケールの存在がごろごろ転がっている感じ。
死・時・次元といったものがあっさりと流転し、
ありとあらゆる事象のスケールがトチ狂ったような、
そんな混沌とした世界が舞台の物語である。

混沌としているのはキャラクターも同じで、
ウォルターは単なる『悪い魔法使い』ではないし
ローランドも単なる『正義のヒーロー』ではない。
特に原作のローランドは、目的の為なら女子供も
容赦無く利用する非情な男であり、一方では
その後悔によって精神崩壊の一歩手前まで
追い込まれる繊細さも秘めている。

短い尺の中で頑張ってると言えなくも無いけど……
残念ながら映画版は、原作のミニマムな部分も
マキシマムな部分も再現しきれていないと思う。
『暗黒の塔』というより『暗黒の平屋1階建』くらい。

...

映画単品として観れば、
「壮大な世界観に見合ったスケール感やオリジナリティは
 打ち出せていないが、主演陣やクライマックスの迫力は
 良いのでそこそこの出来」といった所だろうか。
しかし個人的にはやはり「キング渾身の作品の映像化が
こんなハンパな出来とは……」という失望の方が大きい。

製作費が工面できないなら無理に映像化しなくて
良かったのに……何してくれてんのSPEさんよ……。
単品なら3.0判定とする所を、一段落として2.5判定で。

<2018.01.27鑑賞>
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余談:
原作ファンへのサービスか、本作には『暗黒の塔』
以外のキング原作へのオマージュ的なシーンが多い。
4、5作品ほど見つけたが、うーん、他にもあったのかしら。
だけどそんな目配せしたって判定上乗せしませんからね。メッ。

※2018/2/4 誤字脱字等修正

浮遊きびなご
Minaさんのコメント
2018年2月9日

映画も大変ですね
製作陣は頑張ってるんだろうけれども…

Mina
Minaさんのコメント
2018年2月6日

コメントありがとうございます。
「ミスト」に引き続きTVドラマ化するという情報を得ました。
…ご存知かと思いますが。

そちらの方が期待できそうな予感です。

Mina
Minaさんのコメント
2018年2月5日

お久しぶりです。
今日観賞して来ました。
私も原作を同じく挫折した者
でしたが、やはり長編小説があっさり95分で完結には引っ掛かりました…

Mina
寝落ちマン(次男)さんのコメント
2018年2月4日

×4 5作品→○4, 5作品でしたか()
安堵しました😅
2分ごとのカオス映画(())

寝落ちマン(次男)
寝落ちマン(次男)さんのコメント
2018年2月4日

私も原作挫折組📚です。
原作読者はつい語り部化してしまいますね()
45作品⁉️🤡(←観てない)
早撃ちガンマン並みの目敏さですね😳

寝落ちマン(次男)