劇場公開日 2018年3月10日

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「原作読んでも巧妙に騙された」去年の冬、きみと別れ アラカンさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5原作読んでも巧妙に騙された

2018年3月17日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

怖い

知的

原作は,一人称体の文章で書かれたミステリー小説である。内面的な描写が多く,様々なものが当事者にどのような印象を与えるのかや,一人称の主体がどう考えたかという記述が主であり,その一人称の主体が時々代わることで大きなトリックが組み込めるという仕掛けなので,映画化したらナレーションだらけになってしまうのでは,とか,仕掛けができないのでは,などと懸念したが,いずれも杞憂に終わった。原作とは人物設定が変えてあり,原作を読んだ人でも騙されるような巧妙な仕掛けができていて,非常に面白かった。

ただ,主要人物の立場を原作と変えたために,物語のキーとなる人物の異常性はやや薄らいでしまった感があったが,その分,設定を変えた人物の異常性が際立つ結果となり,これはこれで良かったような気がする。原作を読んだ人でも,読んでない人でもそれぞれ非常に楽しめる出来上がりになっていると思う。

役者は,まず主役のエグザイルの岩田があまりに無表情だったため,何だこれはといきなり面食らったが,見終わってみれば計画的な演技だったのだろうと納得がいった。斎藤工は相変わらず芸達者だと思った。山本美月は今回も外見だけが強調されて,あまり役に恵まれなかったような気がした。

音楽はクラシカルな仕立てで映画の雰囲気をよく描き出しており,良い仕事をしていたが,エンディングで劇中の曲とは縁もゆかりもないラップ調の曲が流れてきて,余韻を台無しにしてくれたのには腹が立った。

演出はよく頑張っていたと思う。私も見事に騙された口である。スタジオのレイアウトなどの雰囲気もよく出ており,女優を妖艶に見せる方法も正当なものだと思った。ただ,物語の鍵となる蝶の写真は,あれではないだろうと思った。あと,原作に出てきた人形師の作った作品も見てみたかった。
(映像5+脚本5+役者4+音楽4+演出4)×4= 88 点。

アラ古希