「誕生 生殖 死」DARK STAR H・R・ギーガーの世界 いぱねまさんの映画レビュー(感想・評価)
誕生 生殖 死
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故ハンス・リューディ・ギーガーの伝記的ドキュメンタリー。
ドキュメンタリーとしてかなり秀逸に作り込まれた作品である。そもそも題材であるギーガー氏自身がミステリアスで、それ以上に産み出された作品がアバンギャルドな画風の為、嫌が応にもドラマチックな展開になってしまう。それでもなるべく自然に、淡々と語られていく構成の妙に唸らされてしまう。
ナレーションはなく、あくまでも本人及び脇を固めるスタッフ逹の語りが続く。又、そのスタッフが濃いキャラで、元妻や恋人、ファンや精神科医で、それだけこの人が周りに好かれていたのが一目瞭然である。
類いまれなる異才の持ち主であり、それを現実化する技術力の高さ、天才故の頓着がない非現実な暮らし等々、どの切り口でも魅力的なエピソードに事欠かない。そのエピソードを丁寧に紐解き、まとめあげる編集も又、高い次元を保っている。
『エイリアン』のデザインだけでない、人を惹き付けて止まない作品のテーマは表題の通り。だから生物の本源的なモノを人は興味を無くさず、目を奪われるのだろう。
飄々とした立ち振舞いや庭にミニトレインを走らせる子供っぽさ、宵越しの金を持たず有り金全部自作品につぎ込む切符の良さ。こんな自由な人があの第二次世界大戦を潜り抜けてきたかと思うと改めて次元の違う人の生きざまを垣間見た感動である。
バブル時期、白金にあったギーガーズバーを訪れた時の圧倒的世界観にヤラれた自分としては、充分満足できた観賞であった。
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