「イオルフ=映画鑑賞者という構図が生む没入感」さよならの朝に約束の花をかざろう かちましたさんの映画レビュー(感想・評価)
イオルフ=映画鑑賞者という構図が生む没入感
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見るまではよくある中世風ファンタジーかなと思って正直舐めてました。
まずこの映画には本当にたくさんのテーマがある。イオルフと呼ばれる長命の種族と、人間との関わり合いを通して繰り返し描写される、「生と死」というメインテーマとは別に、主人公マキアとその養子的存在エリアルとの「母子愛」を筆頭に「自由」、「成長」、「戦争」などのサブテーマが副次的に描写され、それらが最後には、長命の主人公たちの人生の一部=ヒビオルとして収束していく。
ここで長命の主人公たちイオルフが、映画鑑賞者と重なる。時が止まった種族イオルフと同じ目線で鑑賞者は、エリアルの成長を見守り、出会いと別れを経験していく。御伽話の世界で汚れを知らなかったイオルフたちが、危機に直面することで、過酷な現実世界を生き抜き、様々な経験を重ねて、また元の御伽話の存在へ戻っていくというプロセス(=ヒビオル)は、まさに鑑賞者の映画体験を体現している。
それぞれのテーマ自体は、非常に普遍的で擦られつくしたものだと思うが、このイオルフを介した映画体験によって、観る人のヒビオルに刻まれる、そんな映画だと思う。
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