四月の永い夢のレビュー・感想・評価
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めぞん一刻をリスペクトしているが。
『めぞん一刻』を男目線で焼き直して、この映画の中で、響子さんの代わりに初見さんを泣かせる。
『as time goes by』は時間が経過しても自分は変わらないと言う事。
『時間の流れに身を任せる』と言うのは、日本のあの歌。やっぱり、男目線なんだよね。
JAZZSINGERを舐めてはいけない。
同様に蕎麦屋を舐めてはいかない。
そして、教師を舐めてはいけない。
一刻館よ永遠なれ。五代裕作と響子さんの娘の春香ちゃんは37歳なんだね。もう、孫いるよね。『as time goes by』だけどね。
『貴方の手紙は私の宝です』男はそれで満足する。女のそう言う言葉を男は密かに知って悦になる。男をくすぐるね。
最後にしっくりきた
ゆっくりと流れていくストーリーですが、最後にやっと「なるほどな」と合点がいきました。
主人公は、恋人が亡くなって3年経つが前に進めない。何処かに行ってしまうような不安定な女性。
普通、教師まで辞めるか?辞めて蕎麦屋でバイトするか?
何故、そこまで恋人の死を背負って生きているのか?と思いながら観ていました。やっと最後に恋人の死亡時期と理由(自死?)の説明があり、だから自分を責めるように生きていたのか?と合点がいきました。
映画HPの人物紹介にあった「小さな秘密」。それが彼女を苦しめていたのですね。
別れた後の出来事まで背負ってくれる女性がどこまでいるのか分かりませんが、そういう女性がいて欲しいとも思えた作品でした。
回復再生のドラマ
はっきりとは示されていないが、別れた寸前の交際相手がおそらく自ら死んでしまい、それが心から離れず、さまよっているような女性主人公(朝倉あき)が心を回復させるために、交際相手の田舎の実家まで旅をし、その両親や妹と語り合い、そして現在、不器用なてぬぐい工員(三浦貴大)の下手くそなアプローチと、ラジオから流れてきた工員の書いたメッセージを偶然聴いた主人公の
ラストの思わずの笑顔が印象的な良心的な作品。惜しいのは、死んだ交際相手との回顧シーンにはっきりとはあらわされてはいないが手と手を絡ませるだけの映像で、婚外性交渉を予想されるような場面があったのは、私の感覚からは余計だと思ったので減点。だが、おそらくその交際相手とは結婚寸前までいったからこそ、喪服で桜と菜の花の中をたたずんでいる主人公の、ラスト同様に
印象深いシーンが示されていたのだろう。とにかくラストに思わず破顔してしまう主人公は心身ともに美しい。
痛みから逃げず向き合うことで人生を得る。
子どもの時は人生の意味なんて考えることなく、「今、ここ」で瞬間、瞬間を自分まるごとで生きている。子どもの時の人生はある意味「獲得の人生」だと言える。
それが大人になると物事の意味が理解でき、様々な現実と向き合わなければならなくなる。「獲得の人生」だったのが今度は「喪失の人生」になっていく。
しかし、「獲得」と「喪失」は表裏一体で何かを失うことで何かを得ることもある。ただ、そのためには現実から目を背けず、痛みから逃げてはいけない。喪失が獲得へと変わるためには、時間や人の支え、そして自分と向き合う勇気が必要なのだ。
主人公は3年の月日を経てようやく四月の永い夢から目を覚まし新たな人生を得たのである。
描かれなかった3年間に思いを馳せる
とても上品で温もりのある、静かなる良作でした。
時間が止まっていた主人公が、その原因となった喪失体験と向かい合いうといったタイプの作品で、少しだけマンチェスター・バイ・ザ・シーっぽいなぁとの印象を受けました。
そんな細やかな変化をテーマに据えた映画なので、当然雑な作風ではなく、予測通り内容は丹念に描かれていきます。丁寧で繊細な地味映画を好む私にとっては、はっきり言ってド真ん中の作品でした。
何気にもっとも印象に残ったのはラジオでした。
主人公・初海は恋人を亡くし(多分自死)、3年間時が止まっています。そんな寄る辺なく四月の永い夢の中を漂っている初海は、意外とラジオに支えられてきたのかな、なんて感じたのです。ラジオだと、スピーカーの向こうに人の息遣いがあります。TVや音楽に比べ「人が側に居る感じ」があるのではないでしょうか。SNSとかだと今度は近すぎて揺さぶられる。初海が夢から覚める準備をするためには、ラジオとともに暮らす日々が不可欠だったように感じます。音楽もラジオを通すからこそ、初海に響いたのかもしれません。
また、初海が暮らす国立の街の雰囲気も素晴らしいです。バイト先の蕎麦屋も、お客とのコミュニケーションがあり、一緒に夏祭りに参加するなど、地域の縁が切れていない。だから初海も人の縁から切れないため、本質的な転落はしない。
志熊さんや楓との出会いによって、少しずつ現世とのつながりを取り戻していく初海ですが、描かれていない3年間で、喪失と向かい合う準備ができていたのではないかなぁ、なんて思ったのです。ラジオと街のぬくもりによって、初海は孤立せずに3年間に及ぶ四月の永い夢の中を生きれたのではないでしょうか。逆を言えば、初海には物語が始まるまでの3年間が必要だったように思えました。
また、蕎麦屋でバイトしていたという日常を生きたのもよかった。初海はおそらく実家に戻るという選択肢もあったかもしれませんが(初海の原家族は一切登場しないので、戻れない事情があったかも、でもそんなのはどうでもいい)、こらえてバイトを頑張ったのは凄い。
初海にとって、恋人の喪失のショックとおよびそれに関する心の澱で時間が止まっていたのですが、街やラジオに守られ、堪えながらもできる範囲の日常をこなしていました。なので、実は初海はちゃんと時間を生きられていていたのでは、と感じました。そのためか、富山での初海の告白は、機が熟してポロリと果実が落ちるような自然さがありました。
「人生とは得ることではなく失うことであり、その中で自分自身を発見していく」といった印象的な台詞がでてきます。実は得ることと失うことは表裏一体だと感じます。
喪失だけでは自分を発見できません。喪失と向き合うことで自分を発見できるのです。それすなわち新しい何かを得るということだと思います。
喪失と向き合うことは新しいスタートであり、それが冒頭に述べたマンチェスター・バイ・ザ・シーっぽさなのかなと感じました。エンディングも新しいスタートを示唆するものでしたし。
朝倉あきは綺麗ですね。皆さん指摘していますが声が良い。映画館で最近のインタビュー記事を見ましたがボブヘアになっており、あまり似合っていなかったな。
中川監督は若き俊才といった雰囲気。ちょっと懐古趣味が強いけど、それに酔っ払ってないのでオッケー。スマホでテーマ曲を聴きながら夜の歩道を歩くシーンは特に印象的。というかサウダーヂを思い出してしまったよ!個人的には追っかけてみたい監督です。
ラジオ
3年前に教師を辞めて蕎麦屋で働く女性が自身と向き合って行く話。
再開した教え子の変化や成長、染め物屋の青年との交流、友人からの仕事の誘い等を通じ、自身と向き合い歩き出す決意をして行くストーリー。
温かく優しく良い話だったけど、教師に戻ることへの戸惑いの理由が自分には理解出来ず…。
ラストのリアクションはなかなか響いた。
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