私はあなたのニグロではないのレビュー・感想・評価
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私のように黒い夜
このサイトで検索すると、“ニグロ”という言葉がタイトルに入っている映画は、これ1本のみだ。“政治的に正し”くない単語なので当然なのだろうが、本作を見ればそもそも移民の国アメリカの歴史が、政治的にも倫理的にも正しくないことだらけなのがよくわかる。言葉同様、差別は潜在化しただけで、現在も依然として根強く残っているらしいことは昨今のニュースでも知るとおり。
この映画は、ジェイムズ・ボールドウィンの(文章からの)コメンタリーを案内役に、ニュースフィルムや映画の断片などを自在にコラージュして、その負の歴史を告発する。ドリス・デイ的なものと黒人差別を対峙させるのは、「サバービコン」の世界とも通じるものがある。
主張を続ける勇気
学生時代に「マルコムX自伝」を翻訳で読んだことがある。内容はもう覚えていないが、黒人の誇りと怒りが激しい言葉で書かれていた気がする。ボールドウィンは作家ということは知っていたが作品を読んだことはなかった。
アメリカは同調圧力の強い国だ。誰もが多数派に迎合し、異端を激しく糾弾する。アメリカ人のアイデンティティのありようは、個性を認めようというよりも、大勢で共生感を抱くことに重点があるように思える。その向かう方向は一定しておらず、レディガガに熱狂しているかと思えばトランプにも熱狂する。有名人の個性は認めるが、一般人の異端は許されない。糾弾や熱狂は大抵の場合とてもヒステリックで、論理性が欠如している。銃社会のアメリカでは少数派の意見の主導者は多数派のヒステリックな人間たちによって射殺される。犯人は決して捕まらない。
心配なのは、日本でも同じようなヒステリックな精神性が蔓延しつつあることだ。ヘイトスピーチをする人々は自分の不平不満のはけ口を弱者への憎悪に転化する。野党の国会議員に自衛隊の幹部が暴言を浴びせた事件は、文民統制が崩れて軍国主義の国に逆戻りする予兆に違いない。
これからの日本にマルコムXやマルティンルーサーキングが現われるだろうか。ボールドウィンのように恐れずに発言する作家が現われるだろうか。岸井成格さんが亡くなって骨のあるジャーナリストが消えつつある日本で、言論の自由が守られ、平和が存続できると思えない。他人の存在を許容し、多様性を認める寛容な精神がなければ民主主義は成立しえないのだ。アメリカがかろうじて民主主義国の体裁を保ち、オバマ大統領を誕生させた背景には勇気を持って主張を続けた人々がいたことを、改めて思い出させてくれるいい作品だった。
今のアメリカの政権下で、この映画が公開されたことに感心しました
たのしい娯楽映画ではありませんが、今の時代だからこそ、見るべき映画だと思いました。
自由と英雄をうたう世界にも、差別はあふれていて、市井的には『昔のこと』になりつつあっても、実際迫害を受けた者には現在も続いていて、さらに今は難民問題も重なって有色人種差別以外にも多くの迫害があるように思います。
日本でもたかだか数十年前にはアイヌの土人保護法や琉球、劣性遺伝子、障害と様々な差別と排除が行われていましたが、学校教育で教わらないので意外と知らない人も多いのではないでしょうか。
今のアメリカの政権下で、この映画が公開されたということに意味がある気がします。
つらいし苦しいし、苦い思いをしますが、今見てよかったと思いました。
黒人問題?
僕と並んで帰ると、君が危ないよ。
記録映画ですから…
公開はかなり先だが、一足早く試写で鑑賞した。
昨年来、米国の黒人に関係した映画を見てきてはいるが、本作の登場人物である、米作家で公民権運動家のジェームズ・ボールドウィン(ご本人も黒人、故人)なんてまったく知らなかったので、最初から最後までお勉強させてもらった感じの映画。
大戦後の米国で黒人が置かれた状況について知る足しにはなったが、それ以上の内容ではない。
よほど専門的に学びたいか、そもそもこの作家について興味がないと映画的見応えを感じるのは無理だろう。
事実を踏み台にした公開中の「デトロイト」でも★2つにとどめている批評子としても、それ以上は無理という話だ。
2月2日にNHKBSで放送されたドキュメンタリー「デトロイト暴動 真実を求めて」が遙かに、わかりやすく面白かったね。
海外放送局の作品ではなく、NHK制作のドキュメンタリーだったからね。
ああいう番組を作れてしまうのには、本当、NHKの金力を感じるわ。
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