「あえて言う。最高傑作は言い過ぎ」ミッション:インポッシブル フォールアウト べりじりんさんの映画レビュー(感想・評価)
あえて言う。最高傑作は言い過ぎ
評価が高いのは承知しているし、素晴らしい部分は実際に多くある。
だからこそあえて言わせていただくと、全ての要素が最も優れているという意味では「最高傑作」とは言い難い。
映画館で是非とも観るべきアクションの素晴らしさや脚本の妙などは言わずもがなであるが、いくつか重要なファクターが欠けているのである。
第一に小道具。スパイ映画につきものである最新ツールは今回BMWをスマホで操作するアプリ、超小型カメラくらいしか登場しない。
殆どのシーンはアクションの質や量でカバーされるが、パリでのチェイスは『96時間』のようで、その他のシーンも既視感が満載。
第二に前半の空気感。アクションシーンも少なく、緊張を演出する部分は必要であるが、まるで近年の007のような様式美を気にし過ぎ。「おしゃれでスマート」になり過ぎている。
ベンジーに至っては多少の「小言」を言うくらいで、「コメディリリーフ」をしたのは終盤にかけてのみ。2Dマップは笑った。
また意味深な台詞回しの敵が多く、それがただのキャラ付けであり、のちの伏線になっているようなこともない。従って「この台詞をカットしたところで何の問題が?」というシーンが多々ある。
いくつもの裏切りのある脚本ではあるが、下記に同じく、「あ、これ嘘だ」と見破るのは難しくない。
第三にシリーズのマンネリ。もちろん、その他のどの映画シリーズよりも最新作を期待しているのは間違いないが、カシミールに入ったところから「(時間的にも)でもどうせ助かるんでしょ?」感は否めない
ヘリを墜落させて奇跡的に助かって戦うという辺りはあれだけの規模の空撮をしたわりに単調すぎて味気ない。
それまで「核爆発」「長官の誤認」と裏切られただけに、映画館での迫力のない自宅テレビで鑑賞すると、「ヘリのシーンこんなにいるか?どうせリミット間に合うんでしょ?」とこちらの緊張は完全に途切れる。
もちろん、以上を踏まえてもなお余りある評価を得ていることはわかっているし、スパイアクション映画の中で一級品であることは間違いない。だが、シリーズ最高傑作に位置付けるのは判断を誤っていると言わざるをえない。