「不覚にも目頭が熱く」ミッション:インポッシブル フォールアウト REXさんの映画レビュー(感想・評価)
不覚にも目頭が熱く
ミッション・インポッシブルシリーズは、ゴースト・プロトコルで一つのピークに達したと思っている。
第一作で魅せた宙づりアクションがこのシリーズのオリジンとして確立している以上それを超えることは難しいが、それに近いくらい記憶に残るものとして、あのクレムリン潜入やブルジュ・ハリファのアクションが挙げられると思う。
フォールアウトを見た後でも、独創的なアクションや小道具の多様さは、ゴースト・プロトコルが一番だと今でも思う。
だがシリーズは新たな展開をみせ、ハントの内面的葛藤にフォーカスし、今回は不覚にも泣けてしまった。
ハントは決して完全無欠とはいえず、寄る年波なのか肉弾戦でもやりこめられること多く、ヨレヨレのボロボロになることも。しかし考えるよりも先に、誰の命も諦めないという強い思いが前面に出て、胸熱。
そして前作から登場するイルサ。
彼女はバイクで追うハントに「ひけないだろ」と言わんばかりに仁王立ちになってみたり、突然「一緒に逃げよう」と言ってみたり、彼の優しさをわかった上で翻弄する。
それは女ならではのイヤらしさからくるものではなく、同職種ならではの、足を洗うに洗えない事情からの切迫した心の声だった。
二人は惹かれあうが簡単には肉体関係にはならない。決してハントに寄りかかるだけではない自立した姿勢が、ジュリアを彷彿とさせる。ハントも人の子、女性の好みが手に取るようだ。
終始ヘビーな選択を迫られる今作。今までは猪突猛進に一つのターゲットに向かっていけばよかった。しかし今回は大きな目的のために、わざわざ捕まえたレーンやイルサの命を取引材料にしなければならず、尚且つCIAの疑惑も晴らし、ジョン・ラークを炙り出さなくてはならない。その三つを成し遂げるためにどう行動するのか、目が離せなかった。
その辺の敵も観客をも欺く展開は、さすがユージュアル・サスペクツを執筆した脚本家。お馴染みの変装技を「ハロウィン」と揶揄する余裕もみせる。
そして、全てのキャラが収斂する終盤。
互いに連絡が取り合えないまま、己のやるべきことをする仲間たち。
ハントへの復讐の対象なのにジュリアは「あなたがいるから安心して人生を送れる」と言う。
もう、自然と涙目。
話は変わるが、キーパーソンのソロモン・レーンは、前作からアクションらしいアクションシーンも与えられず、今回も手錠をはめられている場面が大半をしめたわけだが、全然惨めに見えないところが凄い。
そのレーンが見事なロープワークを終盤みせる。MI6現役の時は、拷問が得意だったのだろうか。何となくレーンらしいなと思い、語られていない設定に興味が湧いた。
とにもかくにもCGを多用しないギリギリのアクションを知恵熱が出るほど堪能させてもらった。心の中で何度「行け!頑張れ!」と叫んだかしれない。
仲間思いのハントの優しさや弱さを、「一番の強み」と言い切った長官の死は痛い。次はエルサという大事な人を側に置きながら、思う存分戦って欲しいのだが、どうなることだろう。
とにかく、このシリーズはもうしばらくは間違いない。そう確信した。