「思い切りえこひいき。評価低すぎるだろう」ダウンサイズ うそつきカモメさんの映画レビュー(感想・評価)
思い切りえこひいき。評価低すぎるだろう
ハッキリ言って出来栄えは普通か、それ以下の映画です。
マットはぼてっとしているし、笑えるシーンを期待していたのに意外にシリアスで歯ごたえがあった。
それこそ、映画館に入るときと、出てくるときの気持ちの変わりようと言ったら、映画の表現を借りて言うなら「箱に入る」=小さくなるようなもので、心になにか確実に手に入れて帰っていく。そんな映画だった。見てよかったと思う。
マット・デイモン
彼ほど普通の男が似合う俳優も珍しい。多くの人の共感を呼ぶその独特の存在感で、たくさんの傑作に登場してきた。でもいま彼には思いっきり逆風が吹き荒れている。ここから4、5年は再浮上しないんじゃないかと思えるような状況で、アカデミー賞のジョークのネタにもなっていた。
そんな彼が、ある出会いを通じて心を取り戻していく映画。いわば「魂の再生」を描いたストーリーで、まるで彼のために書かれたような脚本だ。
映画の中でクリストフ・ヴァルツに「ヤツはどうせ戻ってくる。今まで何も成し遂げてこなかった男だぞ」と、見事なほどに本質を見抜かれてしまっている。
小さくなることそのものは実は枝葉の部分で、肉体以上に、周囲の状況にアジャストしていく彼の変化こそが重要なポイントだ。流されて行って、気付いたらここに居ましたという「当事者意識の欠如」こそが、この映画のテーマで、彼は何度も自分を変化させていく。小さくなることで起きる悲喜劇を見せることは前半までで、とうとう居場所を見つけてからの彼は、積極的に成功体験を積み上げていくことになる。
そこまでのプロセスが笑えるならコメディ映画として大成功していただろうが、北欧の科学者が細胞を縮める実験をしてから、社会が変革を遂げる過程は思い切りはしょってある。それでも長すぎるお話だが、むしろ笑える前半部分よりも、活動家の女性と出会ってからどんどん転がっていく後半の展開のほうが、だんぜん映画としては面白い。
ちっちゃい体のマットが、大きい人の中をちょこまかと走り回って、元に戻ろうと奮闘する姿を見て笑い転げる映画を期待している人は、本当にがっかりするしかないと思う。私もその一人だったが、思わぬ拾い物をして帰ってくることが出来た。だから☆はおまけです。
2018.3.6