「超シリアスで、笑えないコワーい映画」ダウンサイズ Naguyさんの映画レビュー(感想・評価)
超シリアスで、笑えないコワーい映画
人類の縮小が可能になった未来を描く、突飛なシミュレーションドラマ。
予告編につられて、単なるコメディかと思ったら、超シリアス。それもそのばず。
アレクサンダー・ペイン監督といえば、「ファミリー・ツリー」(2012)や、「ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅」(2014)などで、"家族と自分"の距離感を描いて、アカデミー賞やゴールデングローブ賞で評価されてきた人。
さらに、"ハリウッドの良心"マット・デイモンが脚本を選んだわけだから、そりゃそうだ。エンターテインメント性とメッセージ性を兼ね備えている本作は、まさにマット好みかもしれない。
近未来、ノルウェーの科学者によって発見された技術で、身長180cmの人間を13cmにすることが可能になった。人口増加による環境・食糧問題を解決するため、"人類縮小200年計画"が始まる。
主人公のポール・サフラネックは、ダウンサイズ計画に賛同して、夫婦で参加を決めたが、土壇場で妻が不安になり、逃げてしまう。独り13cmのサイズで生活をしなければならなくなった、ポールの身に起きる出来事を描く。
意外なのは、環境問題に警鐘を鳴らすのではなく、環境活動家たちのエゴに対してのブラックジョークがてんこ盛り。
結局、"人類の未来"や"子供たちの将来"を考えることができる人っていうのは、恵まれた環境で生活できている人だけ、なのではないか。
しまいには、"ノアの方舟"は、選ばれし富裕層のこと。と断罪するようなキツーいメッセージが飛び出してくる。とても笑えないコメディ。
人類の未来を訴える前に、いま困窮している人を救ってあげないのか?と言われると・・・地球温暖化問題ってどうしたらいいの(笑)?
社会問題をマクロで見るか、ミクロで見るか。実に知的な映画である。
(2018/3/2/ユナイテッドシネマ豊洲/シネスコ/字幕:種市譲二)