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「宇宙の例え」マザー! ジョーカーさんの映画レビュー(感想・評価)
宇宙の例え
衝撃の問題作として日本では公開中止になってしまったいわくつきの映画。監督は『ブラックスワン』と同じダーレンアロノフスキーなのですが、どうも自分にはブラックスワンが合わなくて、どうだこれ!と見せられてる感が厭だったんです。
そして本作、マザー!はヒューマントラストシネマ有楽町にて行われた特別試写会にて鑑賞。問題作とは聞いていたもののそれを遥かに上回るヤバさ。テーマくらいは知らないと平常心では見てられない。実際、主演のジェニファーローレンスもそう述べている。圧倒的な不条理をまるで地球が回るというかのように淡々と描いている。
主人公は名のない女性。彼女には作家の夫がおり、家事で焼けてしまった家を修復に取り掛かっている。この作品の最大の特徴は常にカメラは主人公の女性(ジェニファーローレンス)を追っており、他の人だけのカットは映さない。そして細かいところは省くがどんどん夫が他人を招き入れ、彼らは家をめちゃめちゃにしていく。随所にあるシュールさが余計にキツイ。
ーーこの先は核心を突かないネタバレーー
主人公は本作における家のメタファーであり、それは世界で例えるなら地球。では地球を生かして、支えている寛大な心を持つのはだれか。それはマザーの夫、作家である。彼が作家として何を書いているのかは不明だが、多分世界の変遷の物語だろう。さまざまな星が破壊され、また復活する。そのループを彼は本に描き、現実のものとなっている。あえて聖書には触れないが、家に入ってくる人々は人間、そして家を破壊していく彼らはまるで地球がさまざまな形(資源不足や温暖化)で警告してるのにも関わらず聞かずに環境破壊を続ける我々ではないか!見ている側としてはかなりイライラする展開だが、それはマザー主観であるから。それを考えると恐ろしい。
しかし、個人的にこの作品は現代の世界を皮肉るのではなく、ありのままの現状を伝えたかっただけなのではないかとも思う。