「壮絶で魅惑的な美醜愛憎劇にブラボー!」累 かさね 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
壮絶で魅惑的な美醜愛憎劇にブラボー!
『少女』『暗黒女子』など若手女優が織り成す愛憎サスペンスは好みのジャンル。
同系統の作品の中でも、本作は最上級と言っても過言ではない。
美醜を巡る2人の少女の欲望、嫉妬、人の業、
『ガラスの仮面』のような白熱の演劇ストーリー、演じる事への凄まじい執着、執念、
キスをする事で顔が入れ替わる不思議な口紅が異色ながら面白味のある設定、ほんのり官能的、
そして、土屋太鳳と芳根京子の清純派のイメージを覆すダークな熱演…。
いずれも見応え充分!
対称的な2人の少女。
累。天才的だった舞台女優の母の血を受け継いだかのように、自身も演技の天才。が、顔に口裂け女のような醜い傷が…。
ニナ。美貌に恵まれた若手舞台女優。が、その美しさに反して女優として花開かず…。
こういうキャラ設定の場合、どちらかが共感出来るキャラで、どちらかが憎々しいライバル的なキャラなのだが、どちらも明暗あり。
一見、累はピュアなヒロインのようでもある。が、自分の醜い顔への劣等感は凄まじい。
ニナは自由奔放な性格だが、傲慢でもある。累を見下すその言動。
2人はある禁断の関係を結ぶ。女優として成功する為、不思議な口紅を塗ったキスで、天才的な演技力を持つ累がニナになる。
累の天才的な演技力とニナの美貌で、“ニナ”は完璧な女優として一躍脚光を浴びるのだが…。
自分の演技力の賜物なのに、いつもスポットライトを浴びるのは“ニナ”。初めて味わう華やかな表舞台、甘い恋などに累は魅了されていく。
醜い累は自分が成功する為だけに利用するただの棄て駒。が、同じ女優としての才能の違い、奪われていく自分と周りの世界に、ニナは激しい憎悪に駆られていく。
奪い、自分のものにしたい。手放したくない。
あんな奴に自分を奪われたくない。
2人の立場にも徐々に変化が。
欲や傲慢さが膨らんでいく累。
圧倒され始めていくニナ。また彼女には、ある難病が。
それをチャンスとし、棄て駒の筈だった累は逆にニナを自分の成功の為に利用する。偽物が本物を超える時が目前に…。
が、ニナも黙ってはいない。難病に屈していると見せ掛けて、所詮偽物は本物になれない復讐のチャンスを…。
2人の終幕は…?
2人の少女の美醜と業の渦巻きは、もはや狂気すら感じるほど壮絶。
それを体現した、2人の女優の熱演には拍手と称賛を贈りたい。
やはり土屋太鳳は、ただ作品に恵まれていなかっただけなのだ。少女漫画の実写化作品でのぶりっ子演技は、本人にとっても不憫であっただろう。
そう思わせるくらい、本作では本来秘めていた実力を惜し気もなく発揮。劇中の舞台でも気迫に満ちた迫真の演技を見せ、得意と言われるダンスは妖艶な美しさも披露。
正直、芳根京子という女優をあまりよく知らなかった。NHKの朝ドラで人気を博したようだが、朝ドラは見ておらず、何出てたっけ?レベル。
が、本作で、グロテスクな傷メイクを施し、ボサボサヘアと暗い目付き、口調、「教えてあげる。劣等感ってやつを」という台詞と共に、印象的に強烈に目と脳裏に芳根京子を焼き付けた。
どちらが旨味のある役柄?…じゃない。どちらも旨味と見せ場がある。
累の複雑な難演、ニナの憎々しいまでの傲慢さ。
一人二役でもあり、二人一役でもある難役。
時々こんがらがったりもしたが、見事巧みに演じ分けた。
本作を二人の代表作と呼ばずして、何を代表作と呼ぶのだろう。
ニナのマネージャー役の浅野忠信も、助演だが主役二人に負けず劣らずのさすがの的確演技。
劇中の舞台劇も二人の心情とリンク。ここら辺、詳しい人はより面白味が増すだろう。
唯一の残念な点は、世界的な若手舞台演出家役に横山裕は完全なるミスキャスト…。
終幕は、女優としては圧巻のフィナーレだが、まだアンコールの余地はある。
是非後一幕、壮絶だが魅惑的な、二人の少女の愛憎劇の幕が上がって欲しい。
激しく同意します。累は傑作映画だと思います。土屋太鳳のラストのダンスは絶品です!フラガールの蒼井優のフラダンス以来の感銘を受けました。ストーリーも配役も演技もみな最高でした。