劇場版 響け!ユーフォニアム 誓いのフィナーレ : 映画評論・批評

2019年4月16日更新

2019年4月19日より新宿ピカデリーほかにてロードショー

見ている者の背筋を伸ばさせる、ひたむきで凛とした青春劇

上映時間は100分なのに、いい意味で長く感じる。映画を見ていてごくまれに体験する高揚感があった。

「けいおん!」「涼宮ハルヒの憂鬱」などで知られる京都アニメーションが、武田綾乃の小説をアニメ化したシリーズ最新作。主人公の吹奏楽部員・黄前久美子は2年生に進級し、新入部員たちと再び全国大会金賞を目指す。

和気あいあいと“楽しむ演奏”をするか、今年も全国大会に出場するための“いい演奏”を目指すか。顧問・滝昇の問いかけに後者を選んだ久美子たちは、一分の隙もないハーモニーを奏でるために練習にはげむ。オーディションに選ばれなかった部員は、上級生でも大会ではサポートにまわる完全実力主義。各人のプライドや思いはぶつかり、一触即発の険悪なムードになることも。

スポーツ根性物と見まがうような峻烈なドラマと、細やかな心理描写に引き込まれ、久美子たちの凛とした姿には自然と背筋を伸ばされる。吹奏楽経験のある人は“吹奏楽部あるある”に共感し、そうでない人も自身の部活経験を思いおこすことだろう。吹奏楽に青春のすべてを捧げる部員たちのキラキラと輝く奮闘ぶりが、丹念なアニメーションで描かれている。

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先輩になった主人公・久美子の、新たな顔が見られるのも本作の醍醐味。かつて「上手くなりたい」と悔し涙を流しながら夜道を駆けたことのある彼女は、1年間の経験で“本気になる”楽しさと苦しさを知っている。一癖も二癖もある後輩たちと真摯に向きあうことで彼女自身も成長し、ともに新たなハーモニーを奏でていく。

同作を見ていると、京都アニメーションの仕事への姿勢を体現しているようにも思えてしまう。「いい演奏=いいアニメーション」のために、スタッフ陣は久美子たちのような日々をすごしているのではないか。“京アニイズム”とも言うべき、つくり手の矜持が「響け!ユーフォニアム」シリーズには強く感じられる。

圧巻の演奏シーンはもちろん、これまでシリーズを追ってきたファンが歓喜するポイントも随所にある。初見でも大枠の物語をおえる構成なので、本作を見てからテレビシリーズをチェックするのもお勧めだ。

五所光太郎

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