リズと青い鳥のレビュー・感想・評価
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劇場でも観たけど
本編の時から希美が苦手。吹部への復帰の仕方(ひたすら、あすか詣で。それされたら部長や、退部した時にも副顧問だった軍曹の立場とか考えろよ)も自己中心的だし、退部するのを前もってみぞれに告げないのは兎も角、退部した事を言わないままって・・・・
でっ、そんな希美とみぞれメインの話。
単に演出の都合なんだろうけど、練習したいと言って退部した希美が映るシーン、同じパートの子たちとお喋りしてるシーンが多いのって・・・・外部指導の新山から音大の話をされたのがみぞれだけと言う事で音大受験も止めるし・・・面倒だなぁ。
と、より希美が苦手になった。
みぞれに「オーボエの演奏、(希美に合わせ)ブレーキ掛けてませんか」と言える麗奈凄いわw
でもどう考えたって…
最初の童話シーンの時点で「リズ=希美・青い鳥=みぞれ」だよね、と当然のように感じながら観始めたので、作中で本人たちが「リズ=みぞれ・青い鳥=希美」と見立てながら話が転がり始めたところで違和感が先行して入り込みにくくなってしまったし、満を持してそれが逆だったと気付く流れには、何を今更と(特に希美に対して)思ってしまって…。みぞれのことをの訥々と不思議っ子みたいに評してる希美さん、全体的に考え足りてなさ過ぎるし、結果としてやっぱり自分勝手なことになってるような…だからこそみぞれとバランスしてるということなのか…?
あと、中学時代の話を中心にやるのかと思い込んでたから現在進行形→未来の話だったのに少し驚いた。渋さで見せていくのは本編シリーズと通底というか、更に際立ってて、映画は綺麗ですごい。タイトルから響け!ユーフォニアムの文言を排して、タイトルだけで同じシリーズと分からない潔さも何気にすごい気がする。
二人の女子高生の青春
響けユーフォニアムのスピンオフ作品。作品を知ってないと内容はつかみづらい。作画はなぜか変更されている。
リズと青い鳥という物語と自分たちを重ねて話が進み二人の関係が交差する。
音楽で心理描写をうまく表している。
描写がとにかく美しい
ずっと仲良くやってきた二人組の別れが「リズと青い鳥」という物語や楽曲に沿って、繊細な背景、人物描写のもと描かれる映画
変態的な作画のこだわりで京都アニメーションしていて良かったです 細かな演出への配慮も行き届いていてパスがしっかり繋がってる感じがして良かったです
ただ、考えさせるというか今一つでかい盛り上がりには欠けるなあと感じました
みずみずしく繊細、かつ豊かな時間が流れている。
「響け!ユーフォニアム 」というアニメのスピンオフ。自分は「響け!ユーフォニアム 」は観ていないので、本作だけの評価になる。
非常に完成度の高い作品で、日本のアニメはすごさをあらためて感じた。
本作は高校の吹奏楽部の物語で、フルートを担当する傘木希美と、オーボエを担当する鎧塚みぞれが主人公。希美は華やかで、みぞれは地味なキャラクター。
高校最後のコンクールで「リズと青い鳥」という童話を題材とした同名の曲を演奏することになる。この曲にはオーボエのソロがある。「リズと青い鳥」は、リズという少女のもとに青い鳥がやってくる。この鳥は、少女の姿に変身してリズと一緒に暮らす。しかし、やがてふたりの間に別れが訪れ、青い鳥は飛び立っていく、というもの。本作は、希美とみぞれの関係性をリズと青い鳥の関係性に投影して、どちらがリズで、どちらが青い鳥なのか、という問いを投げかけつつ、ふたりの少女の成長を描いていく。
希美は華やかではありながら、ややずる賢くて自分勝手なところがある。みぞれはずっと希美に憧れて後ろからついてきていた。
しかしながら、物語のある部分で徐々にその関係性が崩れていき、やがて反転する。この演出がとてもうまい。
監督の山田尚子は「映画 聲の形」や「平家物語」なども作っている。両方とも、美しい作画と、作中に漂うなんともいえないかすかな悲しみに似た感覚が特徴だと思う。ハッピーなシーンでも、どこか悲しみがある。もちろん「平家物語」は誰もが知っている文字通りの終わりに向かって物語が進んでいくのだから、悲しみの感覚が出てくるのは当然なのだが、それはそうとしても、山田尚子の作品にある悲しみの感覚にはある種の心地よさがある。
こういう悲しさが、本作の主人公ふたりの関係性が微妙に揺れ動く感じを魅力的にみせる一因になっているのではなかろうか。
本作の特徴としては、物語の最初に登校してから、映画の最後の下校のシーンまで学校から出ないというところがある。
時間軸としては、コンクールに向けて練習をしたり、進路を決めたり、といろいろなイベントがあるので、数か月は経っていると思う。ただ、制服はずっと夏服なので、二学期の一部を描いているのか。
学校の外のシーンは出てこないし、家族も出てこない。希美とみぞれの関係性と、童話「リズと青い鳥」を対比するためのシーンだけに絞られている。
学校から出ないという点では松田龍平の「青い春」もそうだったので、完全に斬新な演出ではないのだが、作品のクオリティを上げる意味では効果的な使い方だ。
本作では学校が、青い鳥をとじこめている鳥かごの役割を果たしているのだと思う。
「リズと青い鳥」の練習をしているシーンで、今までの関係性が思い込みだったことが判明し、それを希美が悟る一瞬が、この映画の頂点だ。
ここまでよくも地道に積み上げてきたものだと感心した。こういう作り方は、塩梅がとても難しい。山田尚子のような作風だからできたのだと思う。
日本は一時期優れたクリエイターがたくさん出てきた時期もあったけれど、最近はなかなか新しい才能が出てきていないように思う。
山田尚子はすでに新人ではないのだけれど、これからもっと大きくなっていくことを期待している。
ハイクオリティ・アニメ映画
美しい映像(現実パートと寓話のパートを使い分けている)やBGM(後半の吹奏楽演奏のシーンは本当に良かった)も素晴らしかったけれど、進路、愛する人との別れ・・・
寓話で語られる”飛び立たなければいけない鳥の少女”と”それを見送る少女”
見送ることしかできない少女と重ねていた”みぞれ”が実はものすごい才能があって飛び立たない鳥だと気づく・・・”のぞみ”との別れを予感させる切ない終わりだけれど明るい未来が待っている、進路や将来について悩む学生の姿を上手く描いている、そう考えさせられる映画だった
少女たちの羽ばたき。大好きという気持ちを込めて
吹奏楽に打ち込む女子高生たちの青春を描いた京都アニメーション作品『響け!ユーフォニアム』の完全オリジナル劇場版。
TVシリーズは未見。鑑賞の一番の理由は、『けいおん!』『たまこラブストーリー』『聲の形』の山田尚子監督の新作だから。
なので、話もキャラクターも全く知らず。
しかしちょいと調べてみると、TVシリーズの続きの劇場版というより、これはこれで独立した一本の作品だそうな。
メインとなる登場人物も、TVシリーズではサブキャラ。
言わば、スピンオフ。
うむ、これならTVシリーズを見てなくとも何とか見れそうだ。
北宇治高校吹奏楽部の3年生。
オーボエ担当のみぞれと、フルート担当の希美。
迎える高校最後のコンクールと、親友である二人の関係…。
ベースであるTVシリーズは全国大会を目指す王道の青春ストーリーのようだが、本作はコンセプトを一新。
二人の少女の心情にフォーカス。
となると、少女たちの心の機微を描く事に長ける山田監督の本領発揮。
まるでキャラに寄り添うかのようにアップを多用し、何気ない表情、眼差し、仕草、息遣い、呼吸、間などで彼女たちの心情や距離感をすくい上げる手腕はいつもながら見事。
親友の二人だが、性格は真逆。
希美は明るく活発で、後輩からもとても慕われている。
一方のみぞれは、いつも独りで居て、無口で掴み所が無い。後輩に言わせると、「先輩、つれないですぅ~」。
そんな二人が親友ってのも意外な気もするが、希美はみぞれに気軽に話し掛け、みぞれにとっても希美は唯一親友と言える存在。
確かに仲良しなのだが…、この二人、微妙な距離感を感じるのも事実。仲はいいが、何か隔てた壁があると言うか、一歩懐に踏み込んでないと言うか、本当に本音や心の中全てを開けてない気もする。
また、みぞれは希美に親友以上の“好き”の感情を持っている。別に同性愛って訳じゃないが、この年代の少女たち特有の色んな感情を込めての“好き”の気持ち。
希美の方はどう思ってるか分からないが、みぞれの眼差しは常に希美に注がれている。追い掛けている。合わせている。
が、引っ込み思案な性格故、それがなかなか伝わらない、届かない。もどかしさ、歯痒さ。
それは演奏にも表れてしまう。
コンクールの自由曲で、みぞれのオーボエと希美のフルートの二人だけのソロがある。
これが上手く噛み合わない。
本当に二人は親友なのか…? 仲良く、上手くやっているのか…?
お互いを感じ合い、思い合っているのか…?
加えて、二人の過去のある出来事も。みぞれを吹奏楽に誘ったのは希美だが、一年の時、希美はみぞれに黙って一度辞めた事がある。それが未だに引っ掛かっている。
噛み合わない演奏、微妙な距離感の“仲良し”、相手に合わせただけの進路…。
何処かよそよそしく、二人の関係に非常に大きな陰が…。
みぞれが演奏に心を込められない理由がもう一つ。
自由曲を理解出来ない。
自由曲は童話で、本作のタイトルにもなっている『リズと青い鳥』。
孤独な少女リズの前に、人間の少女の姿に変えた青い鳥が現れ、二人で一緒に暮らす。
いつまでも一緒。
大好き。
しかし、リズはある日、青い鳥の少女を自分の元から放す…。
希美はこの童話は自分たちに似てるという。
即ち、孤独なリズ=みぞれ、活発な青い鳥の少女=希美。
みぞれもこの童話に自分や希美との関係を重ね合わせていた。
だから、理解出来ないのだ。
何故、リズは最後、青い鳥の少女を放すのか…?
大好きなら、ずっと一緒に居ればいいのに…。
自分も希美が大好きで、ずっと一緒に居たい。
でも、今…。
好きという気持ちだけじゃダメなのか…?
ある時みぞれは、童話の真意を知る。
好きだから、大好きだから、放したのだ。
ずっと“私”という鳥籠の中に居ちゃダメ。
あなたはこの広い、自由な世界へ羽ばたいて、あなたの幸せを見つけて。
それが私の幸せでもあるんだから。
離れても、大好きな気持ちは変わらない。
みぞれのオーボエのソロは誰が聴いても変わった。
圧巻で、聴く人を感動させるほどに。
それはまるで、希美に語り掛けてるようだ。
私は希美が大好きだよ。ずっと一緒に居たいよ。
でも、私はもう羽ばたくよ。
希美の事が大好きって気持ちのまま。
みぞれの心からの演奏を聴いて、希美は動揺を隠せない。
そして気付く。
みぞれを鳥籠に入れたままだったのは、羽ばたけなかったのは、自由で無かったのは、寧ろ自分の方だったのでは…?
ずっと自分を追い掛け、自分を慕ってくれていたみぞれが自分から羽ばたこうとしている。
自分は本当は何の才能も無い。置いてきぼり。ちょっとした嫉妬と、もの悲しい寂しさ…。
希美こそがリズで、みぞれが青い鳥の少女だったのだ。
二人はお互いの気持ちを打ち明け合う。
大好きな気持ち。
本音。
お互い、その気持ちを知って…。
アニメーションの枠に留まらない繊細な心理描写は、感情だけではなく思想までにも訴えかけてくるかのよう。
吹奏楽の音にまでも拘った現実パートが瑞々しく情感たっぷりならば、童話パートはカラフルでファンタスティック。
全体的にふわっとした作風で、人によっては好みが分かれたり、共感出来たり出来なかったりの山田ワールド。
かく言う自分もTVシリーズを見てないからかちと他の山田作品ほどではなかったが、それでもそのクオリティーの高さには感嘆させられ、心満たされるほど魅了される。
終わり方も個人的には良かった。
劇的な終わり方ではない。
コンクールや進路など、やるべき事がいっぱい。
その一つ一つを、頑張る。
少女は、羽ばたこうとしている。
もう一人の少女も、羽ばたこうとしている。
笑顔で、大好きな気持ちと共に、この広い空へーーー。
二人の歩調、希美の表情、鳥の羽ばたき
よくレビューで「映像が美しい」という表現を目にしますが、ほとんどの場合、それだけでは映画は面白くなりません。5分程度のPVならまだしも、2時間近くもある映画(本作の上映時間は1時間半ですが)では、ただきれいなだけの映像を見せられ続けてもすぐに飽きてしまいます。
しかし、この『リズと青い鳥』は映画としてちゃんと面白いです。大きな事件が起こるわけでもなく、物語の舞台が学校の外へと出ていくことのない、小さな物語であるにもかかわらず、なぜ面白いのでしょうか。
それは端的に言うと、映像に多くの情報が含まれているからです。情報には、言葉で代わりに表現することができるものもありますが、登場人物の心情や物語の主題など、簡単に言葉で置き換えることのできない、あるいは、言葉にすると陳腐になってしまうものがあります。
本作では、それを徹底的に映像(そこには音も含まれる)で語りきるという挑戦がなされています。登場人物の表情や仕草。セリフの言葉自体よりも、その言い方や声のトーン。歩き方やその足音、そして楽器を演奏する音。さらには、メタファーとしての鳥の影、鳥が羽ばたく表現……などなど。あらゆる映像表現を駆使して、主に希美とみぞれの心情、二人の関係性を描いているのです。
私は二度劇場に足を運びましたが、二回目の鑑賞時には以下の三つの点に注目しました。
➀希美とみぞれがいっしょに歩く場面
➁中盤から終盤にかけての希美の表情
➂鳥の影、鳥が羽ばたく表現
本作では徹底して学校の中だけで物語が進んでいきます。それぞれの家庭の描写や、休日の場面は一切ありません(プールに遊びに行く話は出てきても、その場面は描かれない)。象徴的なのが、希美とみぞれが登校する場面から物語が始まり、下校する場面で物語が終わることです。
この冒頭の場面と最後の場面とを比較すると、二人の変化を見て取ることができます。初めみぞれは、希美の後ろについて足並みを揃えるように歩いていますが、最後では、みぞれが希美の前を歩いて学校を出ています。二人の歩調も微妙にずれていて、それぞれ自分のペースで歩いているように見えます。みぞれと希美それぞれの変化、あるいは二人の関係性の変化を、二人の歩き方や足音だけで表現しているのです。
物語終盤で、これまで「みぞれ=リズ、希美=青い鳥」だと思っていた構図が反転し、実は「みぞれ=青い鳥、希美=リズ」であることが分かりますが、映像を注意深く見ていくと、それを仄めかす表現が散りばめられていることに気が付きます。
分かりやすいのは、物語中盤から終盤にかけての希美の表情です。希美はみぞれと比べて表情が豊かですが、内心何を思っているか、何を考えているかはよく分かりません。感情表現がストレートな分、よっぽどみぞれの方が分かりやすいぐらいです。しかし、「希美=リズ」という前提で彼女の表情を見ると、不安を押し隠したようなその表情が、自分の元から青い鳥が飛び立っていくことをおそれるリズそのものだということが分かります。
初見時には、希美がなぜ「私も音大に行く」と言い出したのかがよく分かりませんでしたが、これも、自分の元からみぞれが離れていくことをおそれる気持ちから出た発言だと考えれば腑に落ちます。
「みぞれ=青い鳥」であることを仄めかす表現も実はちゃんとあります。それは、鳥の影や、鳥が羽ばたく表現です。初見時はただなんとなく「この映画、鳥が羽ばたくカットがやたらと多いな」と思っていたのですが、どんな時に鳥が羽ばたくカットが差し挟まれているかを見ていくと、あることに気が付きました。鳥が羽ばたく表現の前後には、みぞれが同じパートの下級生と交流を深める場面が必ずと言っていいほど来ているのです。
つまり、鳥が羽ばたく表現は、みぞれ(=青い鳥)が希美(=リズ)の元を離れて自立しようとしている姿を象徴しています。その最たるものが、クライマックスの演奏シーンです。このシーンの直前には無数の鳥が羽ばたくカットがあり、演奏シーンの合間にもインクで表現された青い鳥が羽ばたくカットがくり返し挿入されています。これは、青い鳥であるみぞれが希美の元を飛び立つ決定的瞬間であることを象徴しているのです。
本作では童話『リズと青い鳥』が作中作として出てきますが、ただ童話の中のリズと青い鳥の関係性が希美とみぞれの関係性に重なるだけでなく、途中でその構図が反転するところや、童話の結末を自分たちなりに解釈し、青い鳥がリズの元から羽ばたいていくことを、ハッピーエンドとして捉え直そうとしているところが面白いなと思いました。
映画のラストに“disjoint”という言葉が出てきます。これは数学用語での「互いに素」という意味の他、「離れる」「バラバラになる」といった意味を表す言葉です。この“disjoint”の“dis”が消されて“joint”となる表現は、手を離すこと=別離ではなく、かえってつながりが強くなる、ということを象徴しているのではないでしょうか(私は、愛着理論における「安全基地」の概念を思い起こしました)。「飛び立った青い鳥は、リズに会いたくなったらまた会いに来ればいい」のです。
うつくしい別離と希望のお話
本編未視聴です(スピンオフ作品という事すら直前に知った)
評判を見て「これは凄く好きなやつなんじゃないか」と思ったのですが案の定でした。羨望と絶望と別離と希望のお話。
冒頭の希美がリズと青い鳥の関係を私たちみたいと言うシーン、こいつ当然のように自分が青い鳥側だと認識しているな…!いいぞ…!と思っていたのですが、中盤でみぞれが「ずっと私がリズで希美が青い鳥なんだと思ってた、でも本当は逆だったら?」と気づく場面を見て、希美は本当はずっと前から薄々分かっていたんだろうなと感じました。(そしてあの場面で希美も確信したのだろうな、と)
終盤みぞれが希美に「希美の話し方が好き、足音が好き、すべてが好き」と言うのに対して希美が返せる言葉が「みぞれのオーボエが好き」なの、目茶苦茶残酷で好きですね…。
みぞれの希美に対する感情が「わたしを音楽に出会わせてくれた人、わたしに人生をくれた人」なのに対して希美が一番愛し焦がれているのはみぞれの才能という…
みぞれは「希美のフルートが好き」とは言わなかったんですよね。凄く好きなシーンです。
最後二人は別々の道を選びますが、希美がみぞれと同じ音大に進んだら希美はずっとみぞれと比較する人生を送る事になってしまうのであの結末は希望を感じさせ良かったと思います。必ずしも同じ人生を歩む必要は無いので。
希美とみぞれがそれぞれの人生を手に入れる迄の物語だと感じました。
あと感想を読んで初めて気づいたのですが、モノローグが一切カットされてるんですね。キャラクターの細かな表情の変化や瞳の揺らぎ等読み取れるように描写されていたので鑑賞中は特に気にしていませんでした。
濃密に感じられる校舎の匂い
王道熱血ストーリーで人気を博したユーフォシリーズのスピンオフ作。本編とはキャラデも雰囲気も打って変わって、静かで抒情的な物語が織り上げられています。
●ストーリー
この映画は青春の一風景を切り取っただけの映画であり、いわゆる物語に求められるようなスリリングな展開はありません。本当に学生生活の一幕を切り取り、余計な味付けをせず、そのままに投影した映画です。その上描写されている範囲は非常に狭く、基本的にはみぞれと希美の2人にしかスポットは当たりません。
にもかかわらず、この映画はまさに名作。
本作はコンクールで演奏する童話原作の楽曲『リズと青い鳥』を軸として、進路選択が迫る高3の夏を舞台にみぞれと希美の関係性を描いた作品です。童話に登場するリズと青い鳥の関係性をみぞれと希美に絡ませつつ、二人の交錯しそうでしないもどかしい距離感の変化を辿る。それ以上のスペクタクルはありません。しかし、この悪くいってしまえば起伏の無い話を丁寧に描き、映画として成立させたスタッフに万雷の拍手を送りたい出来栄え。
●演出
この映画は暗喩的なシーン抜きには語れないものです。まだまだ全然拾い切れていないうえ、解釈が分かれる箇所も多そうですが、例えば冒頭、みぞれが希美の足音を認識した瞬間、雑草の中に咲く花が映されるシーン。希美を花に例え、みぞれにとって彼女以外はすべて「雑草」のようなものであるという認識を提示しています。
希美=花という構図は中盤でも登場し、例えば音大いくのやめよっかなーと希美が吐露するシーンでは、背景にウロボロスのように絡まった花が描かれています。
みぞれに対し含むところがあれど、自分からはアクションを取れない希美の自家撞着的な心情を示しているとも取れます。
1回といわず2回、3回とみて、こういったシーンから心情を読み取ってゆくのも楽しい映画です。
また何かを暗示したシーンでなくとも、台詞がなく、BGMに合わせて場面がリズミカル展開してゆく箇所がいくつもあり、独特の綴り方に冒頭から一気に引き込まれます。
●音楽
音楽が題材なだけあり、音楽抜きではやっぱり語れないこの映画。
冒頭からいきなりリズと青い鳥の一部が流れますが、このメロディーはいわば映画の主題として繰り返し提示されます。
その他にもBGMが動きとマッチしながら展開するミュージカルめいたい部分もあり、音なしでは成立しない映画といえるでしょう。
細かな環境音も含めて全体に静かなので、できれば人がいない静かな映画館で観たいものです。
あとEDのSongbirdsが名曲。ちょっと日本語英語なのが気になるけど、いやそんなことはいいんだ。映画の雰囲気によく合った爽やかな旋律で最後を綺麗に締めくくっています。
●絵
童話『リズと青い鳥』はパステル調で描かれ、本編(?)もやや淡めの色彩で色づけられている感じです。瞬きする間に通り過ぎてしまう青春の儚さを感じさせる秀逸な色使い。
あと個人的にキャラデはアニメ!という感じの色を抑えた(特に目元)本作の方が好きです。
●総評
全体を通じて雰囲気の描写が素晴らしく秀逸。スクリーン越しに学校という場所の気配が濃密に迫ってくるような感覚。
放課後の廊下、人がいない冷めた音楽室、そういった記憶が自然に呼び起こされ、自分が送ってきた高校時代の記憶までも掘り起こされ、何とも表現できない感慨が残る作品でした。
言葉では言い表しきれない、名前を付ければ大事な物がこぼれてしまいそうな、そんな淡い感情をこそ大事にしてみたい。
2回目鑑賞以降で評価が変わりました
現時点で8回鑑賞しております。
1回目は殆ど意味が分からずに終了。
気分を悪くされたら申し訳ありません、百合アニメか?と思った位でした。
前回のユーフォ劇場版が久美子が思いを
言葉や行動でストレートに表現するタイプ
対象が先輩への憧憬で有った事から伝わり易かったのかも知れません。
リズは同性の同級生への好意、みぞれも感情を表に出すタイプではなく、希美は逆にはぐらかす・風に流す様なタイプで伝わり難いのかも知れません。
2回目鑑賞時に第三楽章タイトルの「愛ゆえの決断」、新山先生の言葉でどちらがリズでどちらが青い鳥かに二人が気付き口の動きだけがインサートされ青い鳥が羽ばたくシーン
私はここでこの映画の伝えたいものがわかった様な気がします。山田監督は、この手の表現が本当に素晴らしい。
この後はエンドロール迄涙が止まりませんでした。
最初はみぞれが主人公なの?と思っていたのですが鑑賞を重ねるに連れ希美の物語なのかな?と思ったりもしています。
希美と同じ音大を受けるというみぞれ、この時点で希美は自分が「リズ」なのかなと思い始めこのままでは行けないと思いつつも
後輩をプールに誘ったり新山先生からアドバイスを受けるみぞれが自分から離れて行ってしまうのでは無いかと葛藤しつつ…
最後の大好きのハグの後の「みぞれのオーボエが好き」もみぞれの激情に対し冷たい様に感じますが「音楽を続けてね」なのでしょうね。みぞれを吹奏楽部に誘った時の事をハッキリと覚えていないと言いつつも一人で廊下を歩くシーンではキチンと回想していますしね。藤棚のシーンで「神様、どうして私に籠の開け方を教えたのですか」と言うのも希美ですしね。
観る度に何か新しい発見の有る映画です。
他の方のレビューにも有ります様に息吹とか
些細な音にもこだわって観ると良いと思います。劇場では真ん中の席に拘らず今回は右寄、次回は左寄と位置を変えて観ると聞こえなかった音が聞こえたりすると思います。
一度自分には合わないと思った方も見方を変えて再度鑑賞して頂きたいと思います。
長々と拙いレビューで失礼致しました。
物語はハッピーエンドがいいよ。
音の旋律が頭に流れ込んで、
日頃のいろんなことが消えていきます。
会場は半分くらい埋まっていましたが
皆の気配がなく、一人一人が画面に
呑まれて静止しているんだなと。
二人の少女の学園生活を通しての
成長が描かれてるんですが
その心理描写が、
淡いカラーと繊細な動作で
儚い表現が心地よくて。
心を通わせた相手との
距離感を築いていく時の
葛藤は、
みんな経験あるところ。
ストーリーには
表現できない音感や心地よさが
言葉にすると陳腐化しそうで。
その清涼感は
捨てがたい時間でした。
よかった
短い映画なのだがドラマがなかなか展開せずけっこう長い時間退屈だった。主人公が鬱か自閉症気味で、うちの娘があんな風に育ってしまったらどうしようと心配になる。音楽の才能に恵まれていてもあんなに暗い顔で生活していたら何も楽しくないのではないだろうか。暗闇に閉じ込められているような人生だ。
音楽の才能がなくても明るくて友達がたくさんいて、気遣いができる希美みたいになって欲しい。
みぞれがガツンと演奏を決める場面はよかったのだが、音楽がとても地味で渋い選曲で、もっと感動的な曲ならさぞ泣けたのではないだろうか。
『声の形』が素晴らしかったので見に行ったが渋すぎて、攻めの姿勢は感じたのだが、期待したものとはずいぶん違っていた。
かったるい
男が観たい女の子の話
もしくは、男共に向けた女の子の話。
なんか、その世代を描いてはいるが、その世代やその世代を通過した人たちには提供していないんじゃないかと思う。
どおにもむず痒くてキモチが悪い。
身勝手な幻想を振りまかれてるようだ。
足フェチなのかと思う程、足のカットが多かった。翼の比喩なのかとも思うのだが…その割には変化もないように思う。
足のカットがあるのはどおと言う事もないのだが、やたらに乱用するのはいかがなもんなのだろうか…?90分の映画でこんなに多く上履きを見たことがあっただろうかと思うぐらい多いっ。
音楽は凄く綺麗で好きだった。
ラストの無音のリアクションで終わるカットは何だかあざとくて嫌いだ。
ただ、なんかアニメの外伝なのか「響けユーフォニアム」が原作らしいので、そっちから流れて観にきた人には違うのかも。
「聲の形」が鮮烈で、アレを映像化したところが次に選んだ題材はどおいったものなんだろうと意気込んで観には行ったが、完全なファンムービーだった。
細部まで行き届いている表現力は圧巻でした。
いろいろな感情の表現させ方が非常に上手いなぁと感じました。
主人公達の感情の移り変わり方や終盤の演奏のシーンは非常に良かったと思います。
ストーリーにはちょっと入れませんでした
前半眠くなってしまいイマイチ内容が入ってきませんでした。
終盤の演奏シーンは圧巻です。
前後のピントを意図的にズラして遠近感を出す、
実写ではわりとある手法とは思いますがアニメーション
では斬新です。
"言葉"以外で心理描写をする文芸作品
まず、この仕事を成し遂げたスタッフ陣に感謝します。
オーボエのみぞれ フルートの希美の想いの行き違いと その解消、お互いの想いを知った上で明日へ向かう単純なストーリーですが、その心理描写の掘り下げ方が半端ない。
「響けユーフォニアム」自体も各メンバー間の複雑な心理描写を展開する優れた作品でしたが、対象をみぞれと希美の二人に絞り掘り下げて心理描写を突き詰めた感があります。
その心理描写も 口から出る言葉(台詞)ではなく 目の動き、足先の動き、靴の脱ぎ方、手の表情 という身体の一部や 水槽、楽器、廊下に映った影、空という記号的な間接描写で表現されており、台詞にして口に出した方がよっぽど楽だけれど、台詞にしてしまうと深みのある解釈が出来ず安っぽくなってしまう心理描写を丁寧に描いていました。
その手法も、近景ボケ、対象、遠景ボケという遠近構成、ロングショット、近接ショット、無駄な空間をあえて入れたアンバランスな構図等々 言葉にならない心理状態を鑑賞者が読み解けるように配慮した画面構成は並の力量(と予算)では出来ない。全編にわたり、表現の一貫性が持続してます。
配色もディズニー作品と正反対の極めて淡白な水彩画みたいな色調で淡々としたストーリーに沿っていました。
それに、特筆すべきは音場ですね。
画面カット毎に、誰が喋って どこから聞いているかを音で分からせる。BGMは極力控えめにして学校の背景音が臨場感を増し、必要に応じてノイズのみで表現する。また、最初はちぐはぐなオーボエとフルートの演奏が最後に豊かさを溢れさせたシーンは圧巻でした。
例えて言うなら、音楽の録音方法に演奏者毎に近接マイクを立てて 楽器の音を直に録音してミキサーでミックスダウン調整して音場を作り出す"オンマイク"という手法があります。非常にクリアーな音が撮れる反面、楽器の位置、ホールでの響き、雰囲気などが作り物臭くなります。ほとんどのアルバムがオンマイクで作成されます。一方、マイクを離して2本だけ立てて収録する"オフマイク"という手法がありますが、楽器から遠いのでオンマイクほど音色がクリアーではありませんが、楽器の位置や雰囲気が自然に再現される良さがありますが、完成度を上げるには無音に近い環境を作り、マイクを立てる位置を突き詰めるため、難度が高く めったに使われません。
この作品は、映像表現も音響も含めて あえて"オフマイク表現"に挑戦し、高い完成度に仕上げた稀有な作品でした。
学校の中だけという 極めて限定されたレギュレーションに絞ってその分 深さを極めた表現は素晴らしいの一言 多彩なシチュエーションで表現する方がスタッフは楽だと思いますが、あえて難しいシチュエーションに絞ったのは良かったですね。その分、最後に二人が学校から出て歩くシーンがカゴの外を暗示していました。
深さを極めた反面、背景説明は一切なくて この過去の二人の起こった騒動や 前年度から吹奏楽部が2度めの全国を目指すためオーディションを行ったとか、先輩指導者である新山聡美、橋本真博がどういう人物でキーを握ってきたか等々の過去背景に関しては全く語られず ユーフォ初見の鑑賞者に対して不親切になってしまったと思いますが、黄前、高坂のメインキャストも含めて薬味程度にに使うだけで あえて切り捨てたのは英断だと思います。
この作品は、心理描写を簡単に説明せず画面と背景音で鑑賞者に読み解かせ、解釈の余地を残した文芸作品のため、見ていて気が抜けず疲れますが 終わった後に「出来のいいものを見た」という満足感があって とっても良かったです。
表現が深い分、2度、3度と見ると新たに発見する要素がありそうで 2度めを見るのが楽しみです。
繊細な二人の気持ちを描いた物語
響け!ユーフォニアムの中から、みぞれと希美の二人の人間関係に焦点を当てている作品。
2人の気持ちを視線や仕草で表現しているので何回も見れば細かいことに気がつく。
短編なので、細かい表現から、最後彼女らがどうなっていくのか想像するのは楽しいと思う。
しかし、ずっとゆっくり世界が進んでいくので退屈になりやす。
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