「山田監督作で最も抑制の効いた一品」リズと青い鳥 猫シャチさんの映画レビュー(感想・評価)
山田監督作で最も抑制の効いた一品
「響け!ユーフォニアム」シリーズの完全新作となる「リズと青い鳥」。過去作では北宇治高校吹奏楽部の部員達が織りなす青春のドラマに感情を激しく揺すぶられましたが、今作はうって変わって、彼女たちに寄り添うように、静かに見守るような映画になっています。
ジュブナイルの、或いはモラトリアムの箱庭を見守る作品はアニメ・実写を問わず珍しくはありませんが、これらの作品に通底するのはもう届かない、失われた季節への憧憬を見る側に感じさせる事です。だからこそ、大事にそっと見守ってあげたい・・そういう気分で鑑賞できる。
しかしながら本作では、監督自身が「過ぎ去った大人が昔を懐かしむ目線は排除したい」と言うように、そういったある種の甘美さや感傷を排除し、淡々と希美とみぞれ、2人の心の機微を追う作りにしている。夕景や夜の街並みと言った過去作で見られた効果的な場面転換や、ドラマチックな劇伴に頼らないストイックな作風はややもすると「綺麗でお洒落なだけ、心に響かない」と捉えられがちですが、注意深く2人の心情を追いかけていけば、最後には過去作とはまた違った、静かで深い感動(そして、在る種のやるせなさ)を感じられる事と思います。
結局、希美とみぞれは「リズと青い鳥」そのものか?違うのか?そして2人の心は通じ会えたのか、すれ違いのままなのか・・それはもう是非劇場へ足を運び判断して下さい。人と人の距離感という意味では、ユーフォニアム関連作ではありますが、山田監督の前作「聲の形」とも通じるものがあり、前作同様、とても繊細で上質なフィルムに仕上がっているなと感じました。
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