劇場公開日 2017年8月19日

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「ハードル上げすぎ」ベイビー・ドライバー nagiさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5ハードル上げすぎ

2017年8月23日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

常にミュージックが鳴り響き、日常の音や発砲音までもが音楽にシンクロしており、確かに革新的かもしれないが、それはもう『ラ・ラ・ランド』で取り入れられたではないか。それに、なんでもかんでも音楽に合わせればいいというわけではないし、飽きがやって来る。

音楽とのシンクロを売りにしたいなら、強盗のシーンでBABYばっかりにフォーカスするのではなくて、強盗している当人たちにフォーカスして、それこそミュージカル調に、ダンサンブルにコミカルにすれば良かったのにと思ってしまう。
ストーリーの質を落とすのならば、もっと良いものを望んでしまう。言ってしまえば想定内の衝撃だったのである。

とは言え、音楽好きな私にとって、嫌いか好きかと言われれば好きな作品である。カーチェイスのアクションは圧巻だったし。それでも総合的に『ドライヴ』と比べるとどうも劣って見えてしまう。

それはともかく、私が気に入らないのはプロモーションである。
誰だ「カーチェイス版、ラ・ラ・ランド」と宣伝したやつは。私はそういうところが嫌なのである。確かに『ラ・ラ・ランド』は実際素晴らしい映画であったし、商業的にも成功している。しかしその良さを真に理解している者はどれだけいるのか。周囲の人間に聞いても「切ないよね〜」しか出てこない。あの良さはこのレビューを読むくらいの人ならば勿論わかっていると思うが、あの作品が日本で商業的に成功したのはミーハーな若者らに依る部分も大きいのである。その時にも私は少々不快感を覚えたが、そういうもんだろうと思っていた。
しかし、本作品のこのプロモーションの文句には呆れる。どのあたりに『ラ・ラ・ランド』の要素があったというのか。本作品はロマンスのクオリティも高いとは言えないし、日常音とBGMをさりげなくシンクロさせた『ラ・ラ・ランド』の技を使っているというそれだけであろう?真に良さの理解できないミーハーを呼び込んでまで売り上げを伸ばしたいのか?本当に素晴らしい作品ならばそんな下劣な宣伝をせずとも観に行く映画ファンは一定数いるはずである。

商業的成功を求めるが故にそういう売り文句になってしまったことに、日本の配給会社には正直がっかりした。

nagi