「切ないよ、弥生ちゃん」真っ赤な星 いぱねまさんの映画レビュー(感想・評価)
切ないよ、弥生ちゃん
若干21歳(当時)の女流監督が撮影した作品。彼女の過去作を鑑賞はしていないし、どれだけの才能があるのかは正直不明である。なので、こんな長編を制作できる類い希なる強運の持ち主という視点で、宝くじに当たった以上の高確率に賛辞と嫉妬を贈りたい。商業作品一本も撮れなくて、夢半ばで去っていく自称監督は掃いて捨てる程いるのだろうから・・・
脚本も監督ということで、ストーリー設定が経験なのか、伝聞なのかは不明だ。それにまして、自分は男だから、性差故に物語の本質を正直理解することは困難だ。なにせ、殆どの登場人物の男は所謂“クズ男”ばかりである。その中で唯一同級生の男の子のみが、まだ理性を保ちながらの関係性を維持していることが救いという図式である。なので、本作のコンセプト自体は、自己優先の大人達と、純粋な子供との分水嶺を激しく表現した青春映画という位置づけであろう。少なくても、今流行りの美男美女がでているラノベ&少女漫画類の作品に比べれば何倍も意義がある作品であることには間違いはないのだが。
そもそもがテーマが『偶然』という括りで集約してしまう位、ストーリー展開に於いて必然性は隅に追いやられている。何で天文台の鍵があくの? なんでコンビニ帰りにその道通るの?いや、そもそもなんで入院していたの?等々、とにかくリアリティが皆無だ。そうなると没入感が乏しくなる。リアリティといえば、お風呂屋さんに於ける主人公ティーンエイジャーの女の子のまだ未発達な幼児体型の姿態が生々しかった位である。赤い星は、パラグライダーの裏地の赤という由来らしいのだが、そもそも星とパラグライダーには共通がない。天文台で観た星は、果たしてアンタレスなのか、その辺りは想像するしかない。
総じて思うことは、大人と子供の戦いの中から、徐々に大人へと変わっていく出発点を表現していること。但し、ここまでセンセーショナルな出来事の数々は、サービスなのだろうけど・・・
濡れ場の薄暗さに、監督の照れを感じるし、正直背伸びしすぎた感は否めない。監督のならなる成長を願って止まない今日この頃である。
追記:日を追う毎に、今作品のコンセプトが段々想像出来てきた。それは、“関係性萌え”という一言なのではないだろうか?女性同士という特殊な間柄に落とし込んでいるが、逆にこれが男性同士であれば、明らかに『ツンデレ』と『一途』という一方通行の恋愛に帰着する構図である。なので、別にこの二人の背景や状況設定の詳細や辻褄は必要ないということなのだ。便宜上、又は映画作品の体で設定されてはいるが、いわゆる“ヤヲイ”系に通じるような同人的なコンセプトなのだと思うようにすると、自然と全てが合致してゆく。となると、今作品、相当マニア受けする出来なのではと強く感じた。