「空白の時間を埋め合わせる癒しと再生の物語に心がほっとする」blank13 Ryuu topiann(リュウとぴあん)さんの映画レビュー(感想・評価)
空白の時間を埋め合わせる癒しと再生の物語に心がほっとする
今、CMやドラマ等で女子に人気の斎藤工さんは、とても若そうに見えるが、実際には30代後半なので、かなり長いキャリアが有る割には中々大ブレイクするまで時間を要した苦労人俳優と言う印象を彼に対して私は持っている。
甘いマスクのイケメン俳優で、どことなく感じがキムタクに似ている分、却って人気が出る迄損をしていた気がする。
そんな彼を私は、レンガ職人みたいな地味な人と勝手に想像している。
来る日も来る日も、コツコツと時間を懸けてレンガを積み上げ続けていく、レンガ職人と同じ様に日々俳優のキャリアを彼は積み上げて今日までやってきたのだろう。
そんな彼が初監督として制作した作品が本作と言う事だが、やっぱり洋の東西を問わず、俳優が監督になると役者の表情がイキイキと画面に焼き付けられているように感じる。
最初BLANK13って何の事?と思っていたら、主人公の父が或る日、突然蒸発してしまい、父と別れて主人公が暮らした空白の13年と言う事のようだ。
そして、別れた筈の父が余命宣告を受けた末期ガンを患い、そこで再会する。
そして、父の葬儀の日に現れた父の知人達大勢の人々に出会いそこで、出会う人達が語る父の話は全く家族の知らない別の顔を持っていた父だったと言う物語はとてもシンプルだ。
家族は自分達の知らない空白の時間に父が過ごした人々と出会い、13年間の空白の埋め合わせをする物語としては、ホンと短い小品なのだけれども、何とも心がホッコリと温まるような目線で物語が語られて行く。そこに、告別式の中の追悼のお話の中で浮かび上がる父に対する静かな癒しと再生の物語が繰り広げられる。
弔問客を演じている俳優陣もとても個性豊かで、きっと彼ら名脇役のみなさんは斎藤工さんからのオファーを即快諾したのかな?と思わせる雰囲気を醸し出している。
それと忘れてはならないのが、高橋一生とリリーフランキーご両人、この2人でこの映画の良さが決まったよね!
父と息子の絆の深さをこの2人が付かず離れず、微妙な距離感を保ちながらも歩み寄ろうとしている感じが痛かった。地味な作品だが、思わぬ拾い物だった!