女は二度決断するのレビュー・感想・評価
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人種差別&移民排斥はネオナチ以外にも存在する
人種差別&移民排斥に端を発するネオナチテロで家族を失った女性の復讐譚…と書けば聞こえはいいが、実はその意識は犯人以外の一般人にも根付いているという実態がこの映画の一番怖いところ。
それは、女性の「最後の決断」を持ってしても消えないのかも。
全3章ではそれぞれカメラレンズを変えて撮影。終始天候がぐずついてる1~2章に対し、快晴シーンをソフトレンズで捉えた最終章が活きている。
だからこそ余計、「最後の決断」が重く映る。
名作三本分に値する一本
三大映画祭に愛されるのも納得。
それぞれの章で骨太なテーマが語られる。
第1章:カンヌ好みの家族劇
愛する旦那は義母の息子であり、愛する息子は孫でもある。
第2章:ベルリン好みの社会派法廷劇
正義とは?被害者のストレスを描くと共にスリリングな駆け引きも堪能。
第3章:ベネチア好みの人間劇
罪と罰と、それに対する贖罪。
《ここからはネタバレの可能性アリ》
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ラストの衝撃で語られがちだとは思いますが、単なる復讐劇では無いことを断言しておきたいです。
決して全てを失って自暴自棄になっていたのではなく、彼女の時間は確実に動き出していた。(鳥、風、生理)
フラットな判断能力を取り戻してからの冷静な決断だったがゆえ、人間が人間を裁く時の責任を取ったのだと思う。
ストイックなサムライだ。
二度目の決断が心に刺さる
テロリストによって家族を殺され、全てを失った女性が犯人に立ち向かっていくサスペンス
そのテロリストというのが、外国人を標的にしたネオナチで、主人公カティヤの夫がトルコ系移民だったことから、標的にされてしまう
ファティ・アキン自身がトルコ系移民の息子ということもあって、この作品はとても身近な出来事として描かれている
また、その「外国人排斥」の動きは、ドイツだけに限らず、ヨーロッパ全土に広がる動きとして描かれていた
その中で、この映画をとても印象的にしているのは、その構成
この映画は、三部構成で作られていて
家族 → 裁判所 → 海
へと舞台が移動していく
もしも、極右団体の主張が正しく、法で罰することができないとすれば
彼らが外国に行った場合、カティヤの夫と同じ立場に立たされるということではないのか…
そう思いながら、この映画の第3部を考えると、極右団体の主張がいかにバカげたことなのかが分かる
そして、なぜ、カティヤは二度目の決断することになったのか
その答えが見えてくる
人はどこで生まれ、どこで生きようとも、みな平等なのだ
カティヤの決断に
心が強く締め付けられた作品だった
現代劇ながらニューシネマのような重厚な終幕が印象的な社会派ドラマ
元麻薬の売人だったトルコ移民の夫ヌーリと獄中結婚をしたカチヤ。出所後堅気の仕事を軌道に乗せたヌーリとの間に息子ロッコを授かり幸せな日々を送っていたが、ある日ロッコをヌーリの仕事場に預けて外出している間に爆発事件が発生、ヌーリとロッコは犠牲になってしまう。失意のどん底の中、警察の捜査に協力するカチヤは事件当日、事務所の前で1人の不審な女性とすれ違ったことを思い出す。
いわゆるサスペンス映画とは趣が異なっていて、愛する家族を一瞬で失ったカチヤが悲しみと憎しみの中でもがき苦しみながら真犯人を追い詰める様を「家族」、「正義」、「海」という三章に分けて残酷なまでに淡々と見つめ、移民に対する差別意識、ネオナチといった現在のドイツに巣食う闇の中を彷徨うカチヤが最後に辿り着く境地に胸が締めつけられる重厚なドラマ。あくまでも現代劇ですが作品が醸す雰囲気は70年代のノワールのそれで、日曜洋画劇場や水曜ロードショーのエンディングのように重く静かな終幕が印象的な傑作です。
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