女は二度決断するのレビュー・感想・評価
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【謂れのないテロによる深い喪失感から、決然と立ち上がった一人の女性の苛烈な選択に一瞬呆然とし、切なすぎる余韻が心に沁みた作品。】
◆原題:Aus dem Nichts どこからともなく・・ といったところか。
・突然、愛する息子と夫をネオナチの無差別爆破テロで失ったヒロイン、カティアの深い喪失感をダイアン・クルーガーが見事に演じている。
・司法の判決にも納得がいかず、最後に彼女が取った選択を責めることは、誰にも出来ない筈。
・それにしても、カティアが決断した"あの場面"は観ていて辛い。
・ダイアン・クルーガー演じるカティアの幸せな時期の表情と事件後の深い喪失感を漂わせた姿の対比が印象的であり、その演者としての力量には感服。
・狂信的なテロに対する一つの考えを提示した作品であると思う。
・邦題もとても良い。
<2018年5月2日 反権力の気風高い都市のミニシアターで鑑賞>
この怒りや苦しみはどこへ…女の決断
ストーリーはあまり把握せず観てる人が多かったので、気になって観ました。
B級なのかと期待していなかったのですが、とてもB級とは言ってはいけない…かなり内容が濃く深いものでした。
製作者様、失礼致しました。
葛藤や抑えられない感情や苦しみ、それに耐える思い…彼女の決断や怒りはとても伝わってきて私も同じような気持ちになりました。
二度目の決断は一度目と違い、いろいろな思いを抱えた彼女の心になったら、その決断が納得と言うか、解ると感じました。
始まりから終わりまで良作な考えさせられる映画でした。
まだまだ問題が多く心の痛いテーマですね。
邦題の牽引力
実際のテロから着想を得た話ということで、重々しい内容でした。旦那と息子をテロで殺された母親の心情が、痛々しいほどに伝わってきます。
中盤の裁判所でのやりとりには、思わず「チョコレート・ドーナツ」を想起させられました。心象や情といったものが通用しない、物的証拠のみで判断する裁判というものが、いかに非情であるかを再認識させられました。正義とはいったいなんなのでしょう。
人間というものは、とかく恐ろしいものですね。
邦題が若干、やらかしている感じもしましたが、いいタイトルだと思います。みごとに、観てみたいな、と思わされましたから。
第三者の存在とか
疑わしきは罰せずとか、端から見れば耐え難い話ではあるが、あれが裁判の現実なのだろう。
物証を積み重ねても、確たる証拠なしでは安易な逮捕が出来ない。
今回の容疑者もその結果、無罪となってしまう。
彼女がクスリに手を出している事とか、色々含めてもやりきれない作品であった。
外国人の排斥によるテロは卑劣極まりなく、絶対に許されないが経済的な圧力で世の中がネジ曲がっている証とも言える。
容疑者ミラー夫妻は限りなく怪しい人物に描かれており、あの態度には腹もたつ。
ラストは賛否両論あるとは思うが、暴力の連鎖では争いは無くならない。
威嚇として使うか?位にしてほしかったが、やはり家族の居ない世界で遺族が生き甲斐を見出だすのは難しい。
ラストまでの丁寧さ
主人公の内面の逡巡をとても丁寧に描いていて、鑑賞しながら「自分だったら」と考え、感情移入をしてしまう。ギリシャでの葛藤と結実に、人間の心の、単純ではない動きを感じる。ダイアン・クルーガーが見事。
邦題に引っ張られないで!
ついつい題名につられて、
1度目の決断がこれ? じゃ2度目は…などと考えながら見てしまったことに激しく後悔。
英題はin the fade 独題は aus dem nights
グーグル先生翻訳によれば、”フェードで “と “どこからともなく” だって 全然関係ないから、のびのび鑑賞アレ。
丁寧に描いたサスペンスドラマと思いきや、終わってみれば心の痛いところを細い糸でアチコチ引っ張られた感じで、アタタタという後遺症が残りました。
名作でございました。
愛する家族を失った女の哀しい復讐劇
人種差別主義者によって夫と息子の命を奪われた女。
そう、愛する者を失っては生きて行けない。切ない結末だが妙に納得した。
ダイアン・クルーガーがカンヌで女優賞を獲った。幸せの絶頂から終焉まで感情の振幅を見事に表現した。世界を股にかけるクールビューティが母国ドイツの作品で獲ったのが嬉しい。
真の悲劇は国民VS移民ではなく、国民VS国民
サッカーW杯で韓国にすら敗れてドイツ代表はグループ最下位にまで堕ちてロシアを後にした。
代表選手の顔ぶれを見ても、ゴメスはスペイン系、ケディラはチュニジア系、ボアテングはガーナ系、エジルとギュンドアンはトルコ系と、元々のゲルマン系の白人ではない移民系が増えている。
本作は主人公カティヤの夫がトルコ系移民だったため混血の息子とともにネオナチのゲルマン系ドイツ人に爆殺されたのだが、そこまで深刻ではないにしても同じような事態がW杯ドイツ代表のトルコ系2人をめぐって起きた。
エジルとギュンドアンがトルコ大統領のエルドアンを表敬訪問した際に「我が大統領に多大なる敬意を」と書かれたユニフォームを手渡したことがドイツ国内で問題視され、代表から外すべきだと物議をかもした。
また彼ら移民系は試合前のドイツ国歌を唄わないことでも非難されている。
W杯で闘う前からすでにチーム内に不協和音を抱えていたと推測できる。
まさに映画は社会の縮図である。
なお余談だが、現在J1ヴィッセル神戸在籍のポドルスキもポーランド系移民であり、ほぼドイツ国歌を唄わなかったようだ。
たとえ高い技術や豊かな国際経験があっても国家代表が1つのチームとして機能しなければ試合には勝てないことを今回のドイツ代表が明らかにした。
同じゲルマン系民族の国家でもクロアチアのW杯代表がスーパースターはいなくとも1つの組織として団結して闘ったために決勝まで進んだこととは対照的である。
本作の監督ファティ・アキンはトルコ系ドイツ人で、自身の出自を作品に託している。
ただ、主演のダイアン・クルーガーがインタビューで明らかにしているが、ゲルマン系の白人ドイツ女性がトルコ系男性と結婚することは現在でもタブー視されているらしい。
ドイツは近年あまりにも難民を受け入れ過ぎて治安が悪化したため移民への見方が厳しくなり始め、移民制限を掲げるドイツのための選択肢(AfD)が議席数を大幅に増やしている。
そもそもドイツにトルコ系が増えたのは高度経済成長時代に人手が足りなくなった際、安易に労働移民としてトルコ人を受け入れたことに端を発する。
同じ頃日本も高度経済成長を迎え、今以上に人手不足であったが、日本は安い労働力としての移民に頼るのではなく、設備投資による生産性向上を推進することで高い経済成長率を維持した。
結局トルコ系労働移民がドイツに居着いてしまい、さらに家族も呼び寄せて世代を重ねるごとに人数を増やしている。しかもトルコ系はイスラム教徒であるためプロテスタントのキリスト教国であるドイツの国柄にはなじんでいない。
本作でも夫の両親はトルコ在住で、カティヤや彼女の母親との関係は決して良好ではなさそうに描いている。
また本作ではトルコ系移民の街で爆破テロが起きた設定だが、日本でも現在埼玉県の西川口が漢語の看板が乱立したチャイナタウン化し、日本人が寄り付かなくなっている。
あまり知られていないがドイツでは移民を受け入れたことで元々のドイツ人の給料も上がりにくくなっている。
監督のアキンもトルコ系ということで差別されてきたという。
移民受け入れで貧しくなった元々の国民とその国の言葉も満足に話せず差別され社会的な地位の低い移民の対立は避け難く、まずは互いに相争うようになる。移民は外部勢力にそそのかされる場合もあるが、自暴自棄になれば双方がテロを起こし、社会が不安定化していく。
現在日本でも自暴自棄になった人間が無差別殺人を起こしているが、移民が増えれば矛先は移民に向かうようになるかもしれない。
まさにアメリカ・イギリス・フランス・ベルギー・ドイツ、北欧各国など、欧米諸国でテロが増えているのも同じ理由である。
そしてもっとも悲劇なのは、経済的心情的理由から移民に肩入れする国民と移民に反対する国民が対立し、国家が分断されることである。
本作でも最大の対立はカティヤとネオナチの夫婦という、元々のドイツ国民であるゲルマン系の対立である。
イギリスのEU離脱、トランプ大統領の誕生、ヨーロッパの右傾化、すべては移民問題に対する元々の国民の揺り戻しである。
日本でも現在労働移民を増やす方向に舵を切り始めているが、このまま進めばおそらく相当な周回遅れで欧米各国の問題が日本で起きるだろう。
本作を観ていて改めて感じたのは、移民受け入れは元々の国民と移民、双方を不幸にするということである。
日本の未来がそうならないことを切に願う想いで本作を観ていた。
まずは我々日本国民が正しい知識を持って移民を拒否する意思を持つことが必要である。
人手不足でも生産性を向上させることで、少人数でも経済発展は可能である。労働力を安く使いたい資本家の嘘に騙されてはいけない!
筆者は愛する祖国が荒廃する姿を見たくはない!
労働移民に明るい未来が見えない度:10
ダイアン素敵でした
ダイアン登壇の先行プレミアで鑑賞。
ストーリーは三部構成になっています。
理不尽なテロにより、愛する家族を奪われた上に、裁判も納得のいくものではなく...これ以上ない悲しみをどこにぶつければ良いのか。
カティヤに感情移入してしまうので、テロ犯が本当に憎らしくって。それくらいダイアンの演技は情熱的です。
観終わった後、決して清々しい気持ちにはなりません。悲惨なテロ事件を社会に伝えるメッセージ性のある作品で、凄く心にズシンときました。
途中で小島監督も登壇。2人はノーマンのゲーム関係で知り合ったって!!ダイアンからノーマンの話が出て嬉しかったわ。
ダイアン美人なのに面白くてキュートな方でした!
二度?
日本人には理解できない政治色の強い映画だったのですね!
二度がよく分からなかった。原題は違うのかな?
すごいアクションがあるわけではない。残酷なシーン、目を覆いたくなるようなシーンがあるわけではない。俳優の表情に終始圧倒され緊張感をもって観ることが出来ました。
佳作
二度決断する、の二度ってなんだったのかなあ。裁判を始めるときの「絶対に有罪にしてやる」という決意と、最後の決断の2つなのかな。
2011年にドイツで起きた、NSU(国家社会主義地下組織)による爆弾テロが題材で、トルコ人の夫と息子を殺された妻のストーリー。
裁判で有罪が下されない部分は予告で見ていたので、どういう結末になるのかとは思っていたのだが、なかなかやるせなかった。みんな見てください。しっかり決着はつくけれども、すっきりしたものではないです。テロに巻き込まれた時点で、すっきりした終わり方になんてなるはずないよね。
極右的異民族排斥活動は、やはり、やってはいけないことなのだと思う。ありきたりな感想ですが。
1章「家族」2章「法廷」に続く3章のタイトルは「海」なんだね。舞台を言ってるだけともいえるが、海か・・意味深。海に帰るしかないのか…
不条理の常態化への怒り
なぜ、我が夫が、我が子が!
その悲しみはあまりにも深く、憎しみはあまりにも大きい。共感できる。
しかし、自ら裁くことはご法度。
決断は、あまりにも悲しすぎる。不条理の連鎖という不条理。
熱演に見入る
少し前から気になっていた作品だったので鑑賞。ファティ・アキン監督の作品は本作が初。かなり考えさせられる作品であった。
ストーリーはテロにより夫と息子を亡くした女性の苦悩を描いたもので三部構成。
まず、主人公カティヤを演じたダイアン・クルーガーには脱帽。精神的に追い詰められる難しい役を見事に演じ、訴えかけるような演技であった。その他の俳優陣の演技も見事で役にはまってない人はいなかった気がする。
ストーリーは難解なものではなく、主人公のカティヤに焦点を当て、割とスローなテンポで展開される。カティヤが何を考えているのか、どんな精神状態なのかと常に考えさせられ、その後の展開を予想しながら鑑賞した。第2部から3部にかけてはスリリングな描写もあり、見ていて飽きることはない。
やはり、見どころは第3部「海」であろうか。二度の決断とその精神性を追うのにもつらい。スマホの動画を見て彼女は何を思ったのか。雨も涙も血液も全て海に流されて良かったのか。考えさせられることは多い。
ここまで主人公の負の感情を役者が体現した映画は今まで見たことがない。重いテーマを赤裸々にシリアスに描写し、ここまで我々に普遍的な問題を提示してくる映画も今まで無かった気がする。
ダイアン・クルーガーの熱演に圧倒され、世の中を顧みるきっかけを与えてくれる作品であった。
自然の包容力はやはり圧倒的
あれだけ裁判で胸糞悪い展開になったならば、ネオナチカップルを爆破せずには終えられないだろうなという、納得の結末だったわけだが、
注目すべきは一度の躊躇であろう。
理不尽な結果にいかに心を蝕まれようと、自然の、海の壮大さは、それほど巨大な復讐心をも包み込むものなのか...自然の清々しさが人間に及ぼす力はここまでのものなのか...やや信じがたくもあるが、人間同士の諸悪の緩衝材、人間の根源的な帰結としての自然の存在はやはり永遠のものなのだろうと、久しぶりに再認識させられた。
結局、彼女は自らネオナチカップルを道連れに爆死したわけなのだが、その納得の最適解に誘導したのも自然のなせるものかなと思うと、この映画は俄然爽やかな作品に思えてならない。
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