「怒り、悲しみ、憤り、やり場のない思いは復讐へ向かう」女は二度決断する 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)
怒り、悲しみ、憤り、やり場のない思いは復讐へ向かう
爆破テロで夫と幼い息子を失ったカティヤ(ダイアン・クルーガー)は、
裁判を通して犯人たちに行き場のない怒りを覚える。
映画は3章に分かれています。
①家族(爆破テロの起こり)
②正義(ほぼ裁判シーンです)
③海(犯人カップルが海辺に停めているキャンピングカー)
特に②の裁判シーンは腑が煮え返りました。
犯人たちは、カティヤの欠点を執拗に追求します。
事件後の悲しみのあまり、ドラッグに手を出したこと。
(犯人の女を目撃した証言に信憑性がないと責め立てるのです)
そして夫のヌーリが大麻の取引で刑務所に4年間服役した事実を
突いて来て、ヌーリに責任があるかのように貶めます。
何より酷いのは偽証と証拠のでっち上げ。
犯人たちは犯行当日、ギリシャのホテルに宿泊していた。
だからアリバイがある・・・ギリシャのネオナチの党首が偽証
するのです。
裁判とは酷いものです。
被害者の傷口に手を入れて引っ掻き回すようなもの。
そして無罪判決がおります。
カティヤは一人でギリシャのホテルを訪ねます。
ネオナチの男が車で追いかけて来ます。
物陰に隠れて、車を追うと、犯人カップルは海辺のキャンピングカーで
のんびりと寛いでいました。
控訴を奨める弁護士のダニーロ。
しかしカティヤの下した二度の決断とは?
犯人を爆破して殺すこと。
そして自分もその爆破で死ぬこと。
でしょうか?
この映画は実話に基づき、移民たちがネオナチの爆破テロで
9人亡くなった事件。
ドイツ警察の戦後最大の失態と言われる
ネオナチによる連続テロ事件。
初動操作の遅れから10年以上も逮捕が遅れ、その間に、
犯人は殺人やテロ、強盗を繰り返した。
監督のファティ・アキン自身もトルコにルーツを持つ人。
監督の強い思いが込められている。
そうか、そういう実話が背景にあったんですね。自分で人を裁いてはいけないと今でも思うけれど、同じ立場になった時に、そう思い続けられるか。映画って、厳しいところを突いてきますね。