「その決断は衝撃的だが、共感できない」女は二度決断する りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)
その決断は衝撃的だが、共感できない
ドイツのハンブルグの刑務所。
トルコからのクルド人移民二世ヌーリ(ヌーマン・アチャル)は、麻薬の大量所持により服役中。
だが、獄中で、ドイツ人女性カティヤ(ダイアン・クルーガー)と結婚する。
ふたりは大学時代に知り合っていた。
それから数年。
ふたりの間には可愛い息子が居、出所したヌーリはハンブルグのトルコ人街で税務関係の事務所を開き、地道に働いていた。
が、ある日、ヌーリの事務所前で爆発事件が起き、ヌーリと息子は亡くなってしまう・・・
といったところから始まる物語で、カティヤの目撃情報をもとに容疑者が逮捕され、裁判が開かれる。
彼女の目撃情報も役に立ったが、逮捕のきっかけは犯人の父親からの通報だった・・・と展開し、犯人カップルはネオナチであることがわかる。
さて・・・
で、これが簡単に、ふたりが犯人でした、となるならば、まぁ、ハナシとしてツマラナイ。
いや、出来れば、そちらの方が観たかった。
裁判で有罪が決まれば納得できるのか、というとそうでもないだろうし、かといって復讐するわけにもいかない。
そこいらあたりを、通報した犯人の父親と遺されたカティヤとの間でなにがしかが展開されれば、かなり興味深い題材になったと思う。
(実際、裁判が終わった際、判決が出る前にに犯人の父親とカティヤがすれ違い、言葉を交わすシーンがあり、おおお、これが展開するのかと思ったのだけれど)
けれど、物語は、そうは展開せず、被告側の極右証人の偽証も明白なのだけれど、「疑わしきは罰せず」の原理に基づき、無罪となってしまう。
やるせないカティヤであるが、やはり、彼女がとる行動については共感できない。
一度思いとどまった、としても・・・である。
自らもろとも・・・というのは判らなくもないが(3部構成でその頭にカティヤ家族のプライベート映像が挿入される、事件後、止まっていた生理が一度目の決断の後にやって来る、など意味ある描写がある)、やはり自爆テロを連想させるし、被害者のヌーリはまったくの無宗教だったということから、この行為、やはり自暴自棄、これしかない、思い込みの行動にしか見えない。
ということで、衝撃的な結末、共感できない。
あがいた末、苦悩した末の行動であっても、である。
平凡な復讐エンタテインメント作品よりも罪深いような印象がしました。