「ただひたすら美しく人を斬る話」散り椿 お水汲み当番さんの映画レビュー(感想・評価)
ただひたすら美しく人を斬る話
一言で言うと勧善懲悪の話なのですが、いろいろケレンを持たせては人を斬る、という造りになっています。
数々の殺陣のシーンは、それはもう芸術的に美しいです。
撮影カメラマンが監督業に進出して、撮りたい絵をこだわり抜いて撮っては並べたという映画なのでしょう。
こだわり。
その中には、剣と剣がぶつかって刀が歯こぼれするというリアルな点までが含まれているのだと思います。
でもストーリー的には、どうよ、と思うのですね。
お話はケレンだらけでグシャグシャで、爽快感がありません。
そういうわけで、この映画は、殺陣を鑑賞するための映画というべく、もしかしたら外国人に日本の美・あるいは芸術の深さを感じさせる意味でなら、値打ちのある映画なのかも知れません。
外国で公開されるのなら、の話ですけどね。
映画において、ケレンは必要最小限に留めないと、観ている側が困惑するだけの作者サイドの自己満足に陥りかねないのだな、と感じました。
そのほか、浪人時代の岡田准一の贅沢きわまりない暮らしぶりや、奥様の娘じみた服装について、時代考証の人は違和感を感じなかったのでしょうか。
若殿の初めてのお国入りが、馬に乗って、わずか数騎で……なんていう、およそあり得ない構図を、どうして許してしまったのでしょうか。
私はあらゆる部分に違和感を感じ、背中がモゾモゾしましたよ。
しょせん監督の器でない、単なる撮影カメラマンのこだわり映像集に過ぎない、と醒めた目で観るしかありませんでした。
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