「絶妙なキャスティング」散り椿 コージィ日本犬さんの映画レビュー(感想・評価)
絶妙なキャスティング
ひらパー兄さん(岡田准一)主演、木村大作監督作品。
前半、セリフも少なく、淡々と感情表現も抑え、たまにボソッとした会話…という演出で、単調さを覚える。
藩に潜む陰謀も、賄賂とお家騒動というところで、さほど特筆する特殊性はなし。
印象付けようという意図なのか、延々と同じテーマBGMが繰り返されて、イラっとする。
せっかくロケで自然と一体になった映像美を狙ってそうだったのに、音で台無しにされたような印象が強かった。
そんな前半から一転、後半に江戸から若殿がやってきて、様々な仕掛けが発動しきな臭くなったあたりから一気に引き込まれる。
ひらパー兄さんの殺陣だけ別次元。
かつての時代劇スターの放つ華やかなオーラではなく、「こいつの動き、本当に喉掻っ切れるんじゃね?」と思わせる殺陣ね。 実際の剣術ではなく、殺陣としての迫力ではありますが。
最後の大立ち回りは必見。
引き気味のカットで、ひらパー兄さんの身長の低さを隠さない潔さはすばらしい。
そして、正義の側を輝かせるのは、憎たらしい悪人の存在。
奥田瑛二がむちゃくちゃよかったなぁ。
キャスティングに関しては、素晴らしいの一言。
映画の肝は事件の真相解明ではなく、男女の恋愛と、生きていく上での心のありようだった。
少々、ひらパー兄さんの亡き妻への思いが強すぎ、メロドラマチックでもあったが、その奥にある妻の愛(と文字で書くと安っぽいけれど)が染みてくる。
時代劇が少なくなったこの時代に、よい作品が一つ生まれたな、と最後には思えました。
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