「冨永監督の映画に自分の体が生理的に好意的な反応を示す」素敵なダイナマイトスキャンダル kizkizさんの映画レビュー(感想・評価)
冨永監督の映画に自分の体が生理的に好意的な反応を示す
僕の大好きなローリングの冨永監督作品。
母親が男とダイナマイトで心中した末井青年がキャバレーの看板描きやエロ雑誌編集長として働いてく話。なんと実話!
基本はどうしようもない人達の人生とエロ。そのエロがアートでも妖美でもなく、ただ猥褻で下品な昭和のエロ。でもこれが一周回って味があります。
必死なのかダラダラしてるのか……曖昧な人が、転がり落ちていく映画を撮らせたら冨永監督の右に出るものはいないなぁ。
主人公の末井は好きにはなれない。けど人生を追いたくなる。
センスはある。仕事は上手。生き方は下手。誠意は無い。悪人でも無い。
そんな人が人生を転がりまくるのが生理的に見てて楽しいのです。ストーリーじゃなく生理的な気持ちよさ。
末井を”頑張れ!”と応援してくなるときもあるし、”最低だな!”と見捨てたくもなる。誰の味方につけばいいかわからない。でも嫌な気持ちにならずに見れてしまうマジック。ローリングもそうだったなぁ。中盤からおかしくなってく末井はゾクッとしました。
末井 昭の影響力などはほぼ描かず。神格化するのでなく一人の青年が転がりまわって生きたのを描いたのも面白い。
妻役で前田敦子が出演。だいぶ”前田敦子感”が無くなって役柄で存在してるようになったなぁ、と。女優って感じです。モヒカン故郷に帰るの時とかはまだ前田敦子感があった。
ヒロインでは三浦透子さんが素敵でした。平成でも通用する昭和の美人。ファッションがめっちゃ好み。
音楽を担当している菊地成孔が出演もしているんだけどコレがハマり役すぎてニヤニヤが止まらなかった(笑)けっこうな長さ出てるし。
”dCprGでカッコよくコンダクトしてる人がすげーセリフを喋ってるよ”と吹き出しそうになった。菊地成孔ファンは一見の価値あり!
そして菊地成孔が作曲/作詞をしている主題歌が素晴らしいのです。薄い後味で終わりそうな映画に深みを与えてる。
カットが芸術的だったり、映像が綺麗だったり、スペクタクルなストーリーが待ってるわけではない。メッセージ性も無いかもしれない。
でも好きになる作品。傑作!って叫びたくなる。
冨永監督の映画に自分の体が生理的に好意的な反応を示す。としかいいようがない!