「作劇の概念すら破壊する怪作にして快作」グッド・タイム バッハ。さんの映画レビュー(感想・評価)
作劇の概念すら破壊する怪作にして快作
脚本会議にかければ絶対通らないだろうと思ってしまうハチャメチャな映画だ。粗雑な強盗をやらかした若者と、知的障害を持つ弟の逃走劇……みたいなプロットは最初だけ。そのあとはあれよあれよと脱線に脱線を重ねるので先読みが一切できないのだ。
本作を観ていると、普段の自分たちがいかに「定番」とか「お約束」に毒されているのかを思い知る。メッセージや深いテーマがあり気なラストシーンも、つい「映画だから何かを読み取らなくちゃ」と考えてしまうわれわれ観客のさもしさを笑っている気さえする。
この映画の凄みは、どこを切ってもチンピラの犯罪者を主人公にしたジャンル映画であるにも関わらず、「今、何を観てるのかわからない」という状態が終始続くこと。しかもこれだけ好き放題やっているのに、前衛とかアートの香りもしないのだ。非常に当惑すると同時に、ほかでは味わえない刺激に満ちている。監督の術中にまんまと気持ちよくハメられたものである。
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