「驚天動地の一大インド叙事詩、ここに完結! その王政には限界があるぞ、バーフバリ!!」バーフバリ 王の凱旋 たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
驚天動地の一大インド叙事詩、ここに完結! その王政には限界があるぞ、バーフバリ!!
賢王バーフバリとその遺児シヴドゥ、親子二代にわたる冒険と戦いを描いたアクション叙事詩『バーフバリ』シリーズの第2作にして完結作。
晴れてマヒシュマティ王国の次期国王へと指名されたバーフバリ。しかし、そのことを快く思わない義兄バラーラデーヴァは王座を奪うべく謀略を巡らせる…。
監督/脚本はS・S・ラージャマウリ。
外連に満ちた奇抜な演出と、観るものの目を釘付けにするトンデモアクション。ラージャマウリ監督の作風が遺憾無く発揮されたこの『バーフバリ』シリーズであるが、本作で特筆すべきは、そこよりもむしろ舞台芸術や衣装の美しさである。
赤、青、緑、黄色といった鮮やかな原色を惜しみなく配した絢爛華麗な民族衣装、ハイクオリティなCGを使いスクリーン上に現出してみせた幻想的な中世インドの街並みや煌めく自然。それら美しいヴィジュアルと、ザック・スナイダー監督作品からの影響を強く感じさせる漫画的なキメ画がハイレベルに絡み合い、これまで観たこともないようなゴージャスな映像が映画全編を通して映し出されている。
この映像美を体感出来るというだけで、本作を鑑賞する意義は十分にあると言えるだろう。
絵画的な美しさは堪能出来たものの、アクションの面白さという点では期待を上回らなかったというのが正直なところである。ヤシの木攻城戦とか笑っちゃうところもあったんだけど、そういうのを最終盤になるまで出し惜しみしてしまうというのはなんとも勿体無い。
ストーリーに関しては、王道の貴種流離譚といって良い。登場人物たちの血の気の多さや、「いつ殺るか?今でしょ!」的な気狂いじみた行動力には面喰らうが、そんな唐突さにむしろ神話性のようなものを感じ、破茶滅茶な展開ながらむしろすんなり受け入れることが出来た。
ただ、それでも一つ気になるのは物語の着地点が「賢王による統治」だった点。
本作で引き起こされた悲劇の数々、それは偏に王族の権力争いと王政の腐敗に起因している。
民から絶大な支持を集めるバーフバリだが、その人気はやがて国の分裂を生み、愛する母子の絆にすらヒビを入れることになる。
民衆を一つに纏め、それを導いていくというのはバーフバリのような賢王をもってしても、というか周囲とのバランスを壊すような優秀な人間であればあるほどむしろ不可能である、という本作の描写は王政の限界への言及に他ならない。であれば、物語のクライマックス、バーフバリJr.の為すべきことは王座を継ぐことではなく、自らの一族が招いた不幸を断ち切るためにも王政を廃し、マヒシュマティ王国を民主国家へと導いていくことだったのではないでしょうか?
まぁ本作は王道の貴種流離譚を描いているのですから、流石にこのオチではひねりが効きすぎている。
モヤモヤするといえばモヤモヤするんだけど、バーフバリには賢い王様として、頑張って国を率いていってもらいたいものである。
世間では割と大絶賛されているこのシリーズだが、個人的にはそれほど楽しめず…。いやまぁ十分楽しんだんだけど、やっぱ『RRR』(2022)の衝撃には及ばなかった、かな。
> すべきことは王政を廃止して民主制の導入では
うわあ、すごい。全然、考えつかなかったです〜。そして考えれば考えるほど、その通り!!
この映画観て、その発想に至るたなかなかなかさんを、尊敬!!!