「壮絶なドラマのようでいて、いわゆるメロドラマ」ローズの秘密の頁(ページ) 天秤座ルネッサンスさんの映画レビュー(感想・評価)
壮絶なドラマのようでいて、いわゆるメロドラマ
産み落としたばかりのわが子を殺害した罪を無罪だと主張し続け40年も精神病棟に入れられていた女性が、精神病院立ち退きの前に現れた医師に過去を打ち明け始める物語。彼女の語る内容から彼女の悲壮な人生の歴史と事件の真相が浮き彫りになっていく。なんともドラマティックな設定と壮絶な内容。赤ん坊を殺害したという事件の真相に物語が近づいていく様子はサスペンスのような感覚を刺激するし、一人の女性が激動の時代をいかにして生き、不遇の扱いを受けながらも現在までたどり着いたかを綴る様子は人生という名のスペクタクルを連想させる。映画が始まってしばらくは、息をのむように作品の没頭し期待感はどんどん高まっていった。しかし、次第に様子が違って思えてくる。あぁこの映画ってメロドラマだったのね?
監督はジム・シェリダンだし、役者はルーニー・マーラにヴァネッサ・レッドグレイヴ、エリック・バナと実力派が揃ってそれぞれその力を発揮するので一瞬気づかないのだけれど、内容はなんともメロドラマ的。なぜか男を引き寄せてしまうヒロインという設定からメロドラマ調であるし、神父の歪んだ愛情と嫉妬も実にメロドラマ的。そこから時代性もあってヒロインがどんどん悲惨な環境へと追い込まれて行くその様子はこちらも心痛で苦しい局面であるのだけれど、それさえもメロドラマの波に呑まれ煽情的なばかりで空虚に見えてくる。本来はもっと深刻だしシリアスだしドラマティックであるはずなのに、それが男女の痴情のもつれか何かと同レベルに見えてくるのには不服も募った。ヒロインに悲劇をぶつけることで悦に入っているかのよう。そしてその最たるものがエンディングだ。上手にやれば見事な伏線の回収ということになるのだろうけど、この映画の場合はあまりにも強引かつ唐突。ここまでくると、メロドラマを超えて古いソープオペラや安っぽいハーレクイン小説のようですらある。一人の女性の壮絶な人生のドラマでもなく、ある事件の真相を紐解くサスペンスでもなく。(日本版のポスターはちょっとメロドラマ風だったけれど、外国映画の日本版ポスターは往々にしてミスリードを招くものが多いのであまり信じていなかった)
ジム・シェリダンはごひいきの監督だったけれど、どうしちゃったのだろう?いい監督といい役者を使って、彼らの才能を思い切り浪費したような作品になってしまった。やり方次第では不遇の時代を生きた女の一代記さながらのドラマになっていてもおかしくなかったようにも思うのだが・・・。