「展開が雑で勿体ない」坂道のアポロン あいわたさんの映画レビュー(感想・評価)
展開が雑で勿体ない
輝かしい友情あり、淡い五角関係あり、という青春映画の美味しいとこ取りしたようなストーリーで、美しい町と映像が魅力的で、セッションは見事だった。
百合香を見つめる仙太郎、仙太郎を見つめる律子、律子を見つめる薫。きゅんきゅんする演技が素晴らしい。終盤の展開と小松菜奈の演技が絶妙。役者の演技が素晴らしかっただけに、展開がイマイチ雑で何とも勿体なかった。
淳兄が東京から戻って来た理由も分からず東京に戻った理由も分からず。薫や仙太郎の目線から見ると淳兄や百合香の大人なミステリアスさが魅力的に映ったということだろうが、視聴者としては消化不良だ。
“そんなある日、千太郎が薫と律子の前から突然姿を消してしまう。”ってラスト10分だけだったし、消えた理由もイマイチ分からず。傷付けた罪悪感から律子のお護りとしてロザリオを残して消えた、というところかと思ったが、それだと消えるタイミングがちょっとおかしいと思うし、酷い消化不良に陥った。
一番肝心の2人のセッションにしても、あそこまで絆が深まるための時間を描いて欲しかった。起承転結の承の部分が弱かったように思う。青春映画ならそこをしっかり描かないと後半の感動が弱くなるじゃない?(時間の演出などいくらでも可能なのだからだ尺は関係ない。少なくとも青空エールではそれができていた。)
60年代を描いた必然性も感じられず。淳兄の学生運動を描くとか、70代になった現代の薫が当時を回顧するとかならともかく、あれなら90年代でも成り立つし余程自然だ。
だいぶ酷評してしまったが、全体的にはノスタルジックで美しい青春映画だった。(雰囲気は良かったし、原作を読んでいれば行間が読めたのかもしれない。)
聖母のような小松菜奈にただ癒された。ラストが絶妙で憎らしい。佐世保、行ってみたい街No.1に躍り出た。