「みる人を選ぶ作品」ジュリーと恋と靴工場 osayatamaさんの映画レビュー(感想・評価)
みる人を選ぶ作品
否定的なレビューが多いですが、私は悪くなかったと思います。お洒落なフレンチミュージカルをイメージして観た結果、裏切られたと感じた方が多かったのでしょう。
確かに画面に華やかさはなく、一見パッとしない普通の人々ばかりに見えます。ですが、演劇やダンスに精通した方が観れば、彼らがよく訓練されたコンテンポラリーのダンサーだということは一目瞭然です。
工場で女性と男性がケンカを始める場面など、リズミカルさはありませんが(そこがコンテンポラリーなんですが)、ケンカを象徴したダンスとしては大変リアルで、身体の使い方がとても面白いユニークな振付でした。また音楽はとても心地よく、仏語の発音やテンポが耳に優しい、センスのいい音楽だったと思います。戦う女の靴も素敵でした!
と、ここまで書いて思うのですが、作品のディテール(音楽、振付、小道具など)を切り離してみると、色々な発見やユニークさがたくさん詰め込まれていて、見どころはたくさんあるのです。ですが結局トータルでいうと、ストーリーにみる本質的な作品の「暗さ」がどうしても素敵なディテールたちを覆ってしまい、ネガティブに終わってしまうのです。
これが主人公のサクセスストーリーであったなら!作品を高評価に導いていたでしょう。
ですが、そこはさすがフランス人なのです。レ・ミゼラブルやシェルブールの雨傘にみる不条理こそが彼らの美学。このネガティブこそがフランスであり、夢も覚めるような現実がドラマであったりします。
不条理、ネガティブ、こだわりのディテール…フランスらしいではありませんか。
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