ロング,ロングバケーションのレビュー・感想・評価
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名優2人の真に迫った演技に見惚れる。
年老いた夫婦が、自分たちがどんな最期を迎えるべきかを考えながら、人生最後の旅をする。夫はアルツハイマーで妻は末期がん。よくあるといえばよくある老人話だし、痛切といえば痛切な話である。
ところが、夫婦を演じたヘレン・ミレンとドナルド・サザーランドは老いというテーマと真正面から向かい合い、決して悲しむべきものとして演じていない。人生には必ずや訪れる局面と折り合いをつけようとする夫婦(主導権を握っているのはボケていない妻の方だが)を、溌剌と、そして楽し気に演じているのである。
やせ我慢というのではない。老いたからといって心が老いるわけでもない。いや、老いる部分もあればいつまでも瑞々しい部分も、どちらも持っている。そんな当たり前であるべきことを、あくまでも平易に、これ見よがしの熱演に頼らず、愛嬌をもって描き切った監督と出演者たちに拍手を送りたい。
ちょっとよくある感動話だと思って舐めていた。これはかなりの拾い物である。
二人の大俳優の人間的迫力に気持ちよく酔いしれる
夫は認知症、妻は末期ガン。そんな高齢夫婦をヘレン・ミレンとドナルド・サザーランドが体当たりで演じ、決してお涙頂戴ではない、人生の酸いも甘いも散りばめたロードムービーが出来上がった。何よりも年輪を刻んだ二人の人間的な迫力が、破天荒なまでににじみ出ているのが素晴らしいところ。一路、目指すはかつてヘミングウェイが暮らしたフロリダ州のキーウェスト。寄せては戻る夫婦や家族の思い出を8mm映像などで蘇らせながら、なおかつキャンピングカーは選挙戦真っ只中の「変わりゆくアメリカ」の姿さえも車窓に鮮明に映し出そうとする。彼らはまるで目的地までの距離のみならず、時間さえも旅しているかのようだ。あらゆる意味での人生のトラベラー。求道者。本作を手がけたのがイタリア人監督のパオロ・ヴィルズィだという点も興味深い。なるほど、こういった視点でアメリカを描くという難しい所業も、外国人監督だからこそ成し得たのかもしれない。
自分にはまだ少し早かったかもしれない
とてもイイ作品だったけれど、良かったとは言ってはいけないような、なんだかモヤるものがあるよね。
若いときはこういった、人生の最期系の作品は観なかったけれど、それなりに年をとって観られるようになったことは嬉しいけれど、さすがにまだ死期を感じるほどではないので、ちょっと掴みにくいところがあるよね。何となく頭では理解出来るけど気持ちが追い付かないみたいなね。
だけど、残り時間が少なくなっても、ドラマチックなことは起こることや、愛を育てることが出来ることなど、終わりの瞬間まで終わりじゃないことを学べたし、ぼんやりとこんな夫婦はいいよねと思えたことは良かった。
主演の二人は共に素晴らしいけど、特にヘレン・ミレンは良かったよね。
怒っているときの演技が最高なんだけど、穏やかなときとの落差が更にいいよね。時折、少女みたいになったり、肝っ玉母さんみたいになったりと、感情、表情、豊かだったね。
作家への言及、特にヘミングウェイが多かったね。ヘミングウェイの家を目指すロードムービーだから当たり前だけどさ。
「老人と海」で感じた、もの悲しい勝利感、もしくは、幸福な敗北、のようなものは本作の中にもあったように思ったね。
今ごろ、ジョンとエラの夫婦はライオンの夢を見ているのかねぇ。
アルツハイマー・ドライビング
車の運転はさせちゃダメだろうと批判的になりつつも、ついつい見入ってしまうロードムービー。その運転に関しては、死期も迫り、人生をどう終えるかを考えていた妻エラにとってはどうでもいいことだったのだろう。エンディングを見てそう感じた。
ヘミングウェイをこよなく愛する元大学教授。教え子の評判も良かったようで、卒業後も彼の自宅に遊びにくる子が多かった。目的地も未だ行ったことのない、ヘミングウェイの家があるキーウェスト。泊りはほとんどキャンプ地で、夜になると、息子が作ってくれたスライドショーを楽しむ二人。毎夜、ドライビングシアターで映画鑑賞を楽しんでるかのような老夫婦の後ろに人が集まってきたりするのだ。
ユーモアあるシーンも全ては、認知症ではあるがヘミングウェイを語りだすと止まらない夫ジョンの姿があってこそ。でも、実際に認知症患者を家族にもってる人にとっては笑えない。失禁シーンも多かったが、ブリーフ派、ボクサーパンツ派よりもオムツ派をお勧めしたくなってくる。なぜオムツにしなかったんだろうな・・・そこだけは疑問が残る。また、トランプ支持者たちのデモに交じって「make America great aggain」などと一緒になって叫んだりするシーンなんてのは、旬を逃すと面白みが半減しそう。
二人の絆を確かめるためのロードムービー。「また戻ってきてくれたのね」というセリフも多かったりするが、昔に戻ってしまうと、まるで別世界に存在しているかのような症状。最後には私の元に戻ってきてねというエラの気持ちが伝わってきて泣けてくる。しかし、病魔は彼女の方が深刻だったのだ。
終盤、夫の浮気が発覚する。それも40年ほど前の浮気。許すことができるのか?と心配にもなるのですが、ヘミングウェイの家が観光地化されていたことのショックの方が大きかったかもしれない。まぁ、知らない方がよかったですね・・・
キャロル・キングから始まり、ジャニス・ジョプリンで終わる。懐かしき音楽の旅もいい。選曲のセンスの良さも光ってました。海の上の橋がとても美しかったので、ついグーグルで検索。キーウェストって島じゃん!とビックリしてしまいました。
最後はどうなるんだろうかと思っていたら、なんとなく『きみに読む物語』を思い出してしまうエンディング。殺人罪まで問われそうだとか、賛否両論ありそうですが、残された子どもたちにとってはとても良いことだと思います。認知症患者を死ぬまで介護するしんどさを取り除いたのですから、息子たちの電話には出なかったけど、これが思いやりだったのだと感じました。
うちの両親には見せられないです。
うちの両親にそっくり。
風貌も性格も、そして老いてトロくなってきた父と、それを心痛めつつ支える母の様子も。
おまけに
「キャンピングカーで旅をしたい」と言うところまで一緒なんだけど・・
面白い映画だけれど、絶対に両親には見せてはダメだと思いました。
辛すぎて。
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【 R指定、+18 】とかのサインはよくあるけれど、高齢者に見せるには保護者の同席を義務づける
【 R指定、―70 】とかのサインも有ってほしいほどだ。
素敵な老夫婦
認知症の夫と重病の妻、二人の老人のロードムービー。
最後は納得いかない自分とこれもありかなとおもう自分が格闘し答えは未だにでません。
まず、二人の関係性が羨ましい。
老人になってもこうありたいなと思える理想像です。
車で各地を走るのですが、景色がまたすばらしい。
アメリカにはあんな道路があるのかとおもうと走りたくなりました。
【50年以上共に暮らした夫婦の見事な生き様を彩り豊かなアメリカ縦断の旅を通じて描き出す】
年老いた夫婦(エラ:ヘレン・ミレン、ジョン:ドナルド・サザーランド)の本当の豊かな人生とは何であろうかという事を考えさせられる、柔らかな陽光溢れる、ロード・ムービーの秀作。
認知症気味のジョンの行動と自らの病を隠して旅に同行するエレの姿が、何だかんだと言って、仲睦まじくて愛おしい。
ホテルで”私は夫と一緒に寝られるダブルベッドじゃないと嫌なの!”とフロント係に言うエラ。ウーン、チョット羨ましいぞ、ジョン。若い頃、浮気していたくせに・・・。
だが、ドナルド・サザーランドがジョンを演じるとさもありなんと思ってしまうのだなあ。あの年にして、色気があるのだよ。
珍道中のような、二人のアメリカ縦断の旅の終わりは少しほろ苦い。
だが、彼らの子供たちの表情から、二人の決断を尊重している事が”私は”読み取ることが出来、沁みたラストシーンであった。
<2018年1月29日 劇場にて鑑賞>
人生を全うした2人
人生を全うした2人が妻は癌、夫は認知症と共に朽ち果てていくが、最後まで愛し合い、寄り添い合うことがどういうものなのか考えさせられた。懐かしさや、ロマンチックな描写の中で、認知症の夫がどんな人だったのか、妻がどんな人だったのかが読み取れ、最後のシーンでは、客観的にみればこんな終わり方は良くないと思うかもしれないが、人生を全うした2人、もしくはその家族達にとっては切なく、美しく、納得のできる終わり方なのではないかと感じた。
老後って切ない
予告みてコメディなのかな?と思い鑑賞しました。
いや、これは笑えないですって!
どんどん記憶があいまいになっていくダンナともう長くない妻、最後のバケーションと言う事で目的地を目指して旅をするわけだけど、途中で起こるトラブルや老人ホームなどではあまり素敵な描写もなくて綺麗事のようなラストになってしまうわけだけれど、ラストシーンは感動しました。
恋人同士としてや、残された家族に対しても愛情の深さを感じましたね。
とにかく最後まで連れ添っている2人のロードムービーとして最初はあまり感情移入できませんでしたが途中からこれは他人事ではないなーとか親の老後とかも考えさせられました。
あまり推奨されるラストではないですが、この先日本でも老人大国となっていく中で考えさせられます。
美しく、優しく、それでいて温かい作品。
認知症やガンが二人を別とうとするも、愛がそれを許さない。
ユーモアやブラックジョークたっぷりで見やすく、テーマもしっかりしている。
これから重なっていく「老い」に寄り添っていける希望をくれる作品だった。
後で思い返すとじわりじわりと感動がやってくる。
連れ添うということ
大好きなヘレン・ミレン&ドナルド・サザーランドが夫婦役とは、観なきゃいかんでしょ(劇場見逃した)。
老夫婦のロードムービー。問題が起きないわけがない。
「蛇行運転して警察に職質されたり。
子供の名前は忘れても、道端で会った教え子の名前は憶えてる。
好きなヘミングウェイの本を読んでも、最後まで読めない。
寝ているとシーツを尿で汚してしまう」。
そんな記憶がまだらな夫を、叱咤激励する妻。
他にもいろいろやらかしちゃって、「いい加減にしてよ!」。
どんなに怒っても、夫は「???」な表情だと、しゃーなーいなって思っちゃうかな。相手の悪気がないだけに。
ヘミングウェイの生家・キーウエスト(アメリカ最南端。フロリダ)への道中の綺麗な景色が、人生の週末への道に重なって見えました。
この夫婦はきっと今までも、妻が尻を叩き、夫が腰を上げる。そんな生活だったんだろうな。
喧嘩しながらも夜は、二人の思い出のスライドショーをする場面。記憶は薄れても思い出はここに残ってる。二人の年月を感じます。
印象的な場面がありました。妻とはぐれた夫が、妻のポーチを見つけ口紅の匂いを嗅いで気が付く所。それくらいたくさん愛し合っていたんだね。
「老い」の話だけど、二人の名俳優のコミカルな演技もあって。それもありかな、なラストでした。
終焉に向かう厳しくも温かいロードムービー
「人間の値打ち」の名匠パオロ・ヴィルズィの新作。何と今作はとことんアメリカン!
ヘレン・ミレンとドナルド・サザーランドの老夫婦が人生の終焉に向かって旅立つロード・ムービー。厳しい内容だが暖かいバイブレーションが救いだ。
人生の終末を考えさせられる
老夫婦の様々な問題をユーモラスに折込、それを名優が見事に演じた、人生の終末を考えさせられる名画。
自分も妻もいつかガンか痴呆になるだろうと思う。その時には同じ様な選択出来ればな。
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