「銃社会アメリカならではの作品」イット・カムズ・アット・ナイト kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
銃社会アメリカならではの作品
謎の感染病によって嫁の父ちゃんを殺して焼却。ただならぬ不気味な森の一軒家の出来事から、ゾクゾクさせられ惹きつけられる序盤の展開。さすがA24だと思わせておいて、謎は謎として何も解決していない、ただ疑心暗鬼に陥るパンデミックの末路。
お前は誰だ?感染してないだろうな?などと、見知らぬ人間が一人訪れただけでも恐怖心が芽生え、やがて殺意へと変わる。侵入者は撃ってもかまわないというアメリカ的な考えも日本人には理解しがたい部分もあるけど、これで拘束されて、その後によく家族同士の付き合いができるもんだと不思議な感覚にもなる。
犬のスタンリーがいなくなり、しばらくして瀕死の状態で帰ってくる。それが二つの家族の精神的、排他的な猜疑心が表面化する原因となった。映像ではポールの息子トラヴィスが悪夢を見たり、赤いドアが開いていたなどと証言するもんだから謎は増すばかり。ウィルの幼い息子アンドリューにしても夢遊病はあるもののドアの鍵には手が届かないのは確か。本当に鍵が開いていたかどうかもはっきり見せない映像は絶妙だ。
現在のコロナ禍で鑑賞すると、感染経路や潜伏期間も気になるところだし、リビングにおいては「密だろ!」と言いたくなる。前半に登場した襲撃者にしても感染してるかどうかはわからないし、犬にも感染するかどうかも謎のまま。そして引っかかるのがウィルの言った「兄の家に」を慌てて「義理の兄」と取り繕った会話。さらに襲撃者を後で話そうと言いつつ、話題にすらならなかったこと。実はキムは兄の嫁さんであり、ウィルはそのキムを不倫の末奪ったのだとしたら・・・
「家族以外は信用するな」という台詞にも含蓄があり、白人と黒人の夫婦だけどしっかり絆があったり、家族のように見えてウィルとアンドリューは実は親子じゃないなんて考えてみると、人間関係の曖昧さも深読みできる。色々と疑ってかかると、自分も猜疑的になってるなぁ~一本取られた!って気分になった。結末の呆気なさゆえに考えさせられる作品。