「21世紀の女の生き方」オー・ルーシー! 耶馬英彦さんの映画レビュー(感想・評価)
21世紀の女の生き方
女というのはかくも哀しい生き物なのかと、改めて慨嘆した。それほど寺島しのぶの演技は圧巻だった。
43歳の独身女。見栄があり諦めがあり孤独があり、そして日々の暮らしがある。歳を追って老いていく自分を認めたくない気持ちはあるが、若いだけが取り柄のOLたちを軽蔑する気持ちもある。
かといって自分を向上させるための努力をするでもなく、一度も片付けたことがないみたいな部屋に毎日帰ってきてはぐずぐずと燻っている。本人には居心地のよさそうなその場所から死ぬまで一歩も踏み出すことがなさそうに見える彼女だが、ジョンの登場ですべてが一変する。
女は灰になるまで女であるというのは、昔のテレビドラマ「大岡越前」に出てくる話だが、一見すると女を捨ててしまったかに見える節子でも、何かのきっかけで眠っていた内なる性が目を覚ます。
それから先の展開には少し驚かされたが、荒唐無稽な印象はちっともなくて、むしろ大変に現実的であるように感じた。それは登場人物のいずれもがどんな場面でも日常を背負ったままでいることに由来する。この辺の演出はとてもうまい。性格も習慣も救いようのない女である筈の節子だが、最後には餌をねだってくる猫みたいに愛しい存在に思えてくる。
人間愛に溢れた傑作である。
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