「名女優たちの狂宴」素敵な遺産相続 曽羅密さんの映画レビュー(感想・評価)
名女優たちの狂宴
御年83歳のシャーリー・マクレーンと御年68歳のジェシカ・ラングの大ベテラン女優がダブル主演したコメディ映画である。
マクレーンの娘役でデミ・ムーアも共演している。
筆者がムーア主演の『ゴースト』を初めて観たのは、高校生の時分に当時ホームステイで厄介になっていたイギリス人家族の家でであった。しかも字幕なしで一家と共に強制的に鑑賞させられた。
正直何を話しているかは全く理解できなかったものの、ハスキーボイスで美人なデミ・ムーアは強く印象に残った。
『ゴースト』の彼女が確実に絶頂期だと思うが、その後は妊娠ヌード、坊主刈りまでしたのに主演した『G.I.ジェーン』の役でゴールデンラズベリー賞で最低主演女優賞を受賞してしまったことやブルース・ウィリスとの離婚などなんだかゴシップネタしか覚えていないハリウッド女優である。
そんな彼女を久しぶりにスクリーンで見ていささか驚いた。すっかり老けた。
一方シャーリー・マクレーンは『アパートの鍵貸します』など若い時の作品も見ているが、今おばあちゃんになってからの印象の方が強い。
年を取っても輝く人、年を取ったら輝けない人、そんなこともあるものかと勝手な感想を抱いた。
老人が主役の作品を日本と欧米で比較した時に、介護や認知症など圧倒的に日本の作品は暗くなる。
日本人のDNAには心配性の遺伝子が欧米人より多く含まれているというが、そのような作品ばかりでは気が滅入る。
日本で老人を主役としたコメディを思い出そうとすると近年だと北野武監督作品『龍三と七人の子分たち』だろうか。ちょっと本作と毛色は違うか?
いずれにしろ日本ではどうしても高視聴率を獲得しているテレビドラマ『やすらぎの里』に行き着いてしまう。
この手の王道コメディはハリウッド映画という外国のものだから受け入れられるだけであって、もし日本人が演じたなら受け入れられる下地すらないかもしれない。
ましてや老人の性まで明るく扱っている。
主演の二人はマクレーンの死んだ亭主の500万円の生命保険が何かの手違いで5億円になって手に入ったことでスペインのリゾート地で豪遊し、そこから物語が動き出しドタバタ劇へと展開していく。
筋立てはいろいろとご都合主義な感は否めないが、コメディとはそもそもそんなものだろう。
別に芸術作品を狙ってはいないのだから。
もし日本でこれを翻案して同じような作品を創ったら?
こんなのは現実的じゃない!と総ツッコミされて終わるのだろうか?
ただ日本には日本特有の感性で作られた老人コメディがもっとあってもいいと思う今日この頃である。