「マイフェイバリットムービーにランクインした」gifted ギフテッド つとみさんの映画レビュー(感想・評価)
マイフェイバリットムービーにランクインした
最高に面白いとは言えないかもしれない。ものすごく感動するとも言えない。傑作と呼べるほどの力もないだろう。
それでも、数百本に一本存在する、自分が「好きだ」と言える映画。それが「キフテッド」だ。
母親を亡くした女の子と、その子を育てる叔父の物語。普通ならば二人の衝突と和解が描かれるのだろうが、本作はそんなありきたりなストーリーを通り越して、もっと深く、家族の愛や人は優しいということを教えてくれる。
いくつかのハッとするような思慮深いセリフがあり、いくつかの心震わせるシーンがある。
それを春の暖かな日差しのような温もりで包み、心地よい作品に仕上がっている。
病院のシーンで、なんとも言えない感動が押し寄せた。これはなんなのだ?何に感動したのだ?誰に感動したのだ?なんで?。理由はわからなくても、メアリーのようにはしゃぐ心と当然のように存在する優しさが合わさって泣けてきてしまうのだ。
主演のクリス・エヴァンスは演技が良かったとは思わないが、好青年のようでもあり、がさつでワイルドそうでもある、複雑な面を表す良い配役だったと思う。そこにメアリー役のマッケナ・グレイスが合わさり、素晴らしい相乗効果を生んだ。
フランクとメアリーを見守り応援する。どちらかだけでは駄目なんだ。二人は一緒にいて欲しいんだ。そんな気持ちにさせてくれる好演だった。
最後にラストシーンについて。
フランクはメアリーに「我思うゆえに我あり」の言葉を贈った。メアリーはそれに対し「フレッド(猫の名前)思うゆえに我あり」と返した。
「あなたを考えるから自分は存在する」という、軽妙でありながら思いやりに満ちた、本作のラストに相応しい暖かい言葉だった。
人は優しい。