「子供の気持ちを尊重してほしい」gifted ギフテッド REXさんの映画レビュー(感想・評価)
子供の気持ちを尊重してほしい
いつもこの手の映画を見ると思うことなのだが、子供の気持ちは尊重されないのだろうか。
アメリカでは両親とも実親なのに親権が剥奪されて、子供が里親に出されることもあると聞く。
誰かに通報されてからなのか、飲酒運転や書類送検など軽犯罪の前科があるから審査されるのか、それはわからない。
今回は自分の成し得なかった夢の実現を子供に強制し、人間らしい生活を奪った女性イブリンと息子である主人公フランクとの確執が軸になり、スリリングな法廷劇としても発展するが、「こどもにとって何が一番幸せなのか」がテーマになっていることは変わらない。
イブリンは実の娘を軟禁し監視し精神的支配下において人生を狂わせたとんでもない人間なのだが、ここまで彼女を駆り立てたものは何だったのか。
自分の考えが皆を不幸にすると認めない頑固な姿勢と、自分の挫折した夢を自分の血を継いだ者の手で成就させたいという欲望、そして世間からの承認欲求。
きっとイブリンも自分の人生の過ちに気がついていたのではないだろうか?
しかし認めたら最後、その虚無感に飲み込まれてしまうのを感じ、鉄の意志でその迷いを塞いだのではないだろうか。
じぶんの子供に天武の才があったとしても、子供時代にしか感じることのできない情緒を奪うことは到底容認できない。感情を自由にできる時代に抑圧すれば、人間らしさの欠如を生むことは、想像に難くないはずだから。
「母親が死んでからそれを公表して」とフランクへ残した姉の遺言に、彼女の心が負った傷の深さを思う。
彼女は本当は誰よりも母親に認めてもらいたかったけれど、同じくらい憎んでもいたんだろう。
誰も幸せにならない、自分さえも不幸にする。なぜここまで家族を追いつめられるのだろうか。イブリンに呆れを通り越して哀れみさえ感じた。
親権の話に戻る。
他人が家族関係のことを把握するのは至難の業だけど、親に虐待されているかどうかは、注意深く子供を観察し会話すれば手掛かりは得られるのではないだろうか。親と引き離したときにほっとした様子を見せたり、逆に戻りたくないと怯えた様子をみせたり。
今回メアリーはフランクと引き離されて泣いていた。こんなに愛着をもっている相手と引き離して、なにが子供の幸せなのだろうか。安心できる場所が居場所なのではないだろうか。法は誰から何を守るためにあるのだろうか。
メアリーの水準に合う教育も、子供らしい生活も与えたい。フランクの最後の選択が、最初からベターだったんだと思う。イブリンは最初からお金を援助すればいいだけ。人って簡単なことに遠回りする。子供に幸せを与えるのは難しいけど、そもそも大人が子供の気持ちを無視しすぎだと思う。