「キャッチボールと保険金詐欺」サバービコン 仮面を被った街 kossykossyさんの映画レビュー(感想・評価)
キャッチボールと保険金詐欺
1950年代に実際に起きた人種差別暴動をモチーフにアメリカンドリームを絵に描いたような町サバービコンで起こる事件。メインはロッジ家の強盗事件。
さすがコーエン兄弟が絡んでる作品。ブラックユーモアたっぷり過ぎてお腹一杯になってしまいました。二人の強盗が入ってきた時点から、銃は持ってないし、父親ガードナー(マット・デイモン)の落ち着き払った雰囲気だし、ニッキーだけが子供だましの狂言に恐れおののいてた。ジュリアン・ムーアは双子役であり、ニッキーのママの方は交通事故に遭ったために車いす生活を余儀なくされていた。この設定だけで、ガードナーが偽強盗を雇ってママを殺そうとしてたのがわかるようになっている。
警察もロッジがマフィアに借金していたことを疑っていたし、保険調査員もかなり疑いを持っていた。ガードナーが義妹と共謀し犯した保険金詐欺により、この調査員、さらに狂言を請け負った強盗たちも裏切られることを危惧して義妹と息子を殺す計画。可哀そうなのが伯父のミッチ(ゲイリー・バサラバ)だ。ニッキーを守るために必死の思いで強盗たちに対峙。まぁ、最後にはみんな死ぬんだろうなと予感もさせる。だってコーエンだもん。
ジョージ・クルーニーらしさといえば、黒人一家の描写。このサバービコンという町も6万人という住人がいながら、黒人がまったくいなかった事実に驚くが、そこまで有色人種に対して差別的、排他的になるものなのかと人間性まで疑ってしまう。スーパーでは黒人だからという理由で値段を吊り上げ、大勢で暴動を起こして彼ら一家の車にも火をつける有様。
家族をすべて失った少年ニッキーが隣家の黒人一家の息子とキャッチボールをするラストが素晴らしかった。この町で真に心を通わせてる子供は彼らだけだったのかもしれない。