劇場公開日 2017年10月6日

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「わかりやすい芸術映画」ソフィア・コッポラの椿姫 まえむきさんさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5わかりやすい芸術映画

2017年12月18日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

知的

ジュゼッペ・ヴェルディの歌劇「椿姫」のオペラを映画で撮ったもの。舞台そのままの映画のようです。ソフィア・コッポラの過去作に「マリー・アントワネット」がありましたが、あれとは違うのです。自分はオペラをちゃんと観たことはありません。通しで観たのはブルーレイでプッチーニの「トスカ」を観たくらいです。

しかし、オペラの音源を聴くことはありました。あまり数は多くないのですが、「椿姫」に関しては、事前に軽く勉強もしました。

この曲は、有名ですよね。

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ああこの曲、よくテレビCMで流れていますよね。凄く楽しげな曲ですが、この「椿姫」の原題は「堕落した女」です。主人公、ヴィオレッタは娼婦です。パリ社交界で男爵をパトロンに持ち、優雅な生活を送っています。そこに若き青年貴族アルフレードがあわられ、恋に落ち、パリを離れ郊外へ逃避行、そして…死ぬ!!という話です。

まあ、このように要するに「メロドラマ」なのです。だから話はわかりやすいです。前に観た「トスカ」もそうでした。字幕つきなので、「そんなどうでもいいことをわざわざ歌に」なんて思ってしまうのですが、基本セリフは無く、全て歌。だから良いのです。

オペラは凄いと、改めて思いました。セリフがなく、全てに歌がついている、それをオーケストラも支えているのです。「それを取って〜」「かしこまりました〜」みたいな短いものにも、歌と伴奏があるのです。すごいなーって。当時は、オペラにそれだけの労力をかけられる事ができたのだな、と実感しました。

パリの社交界が舞台なので、沢山の壮麗な衣装を来た紳士淑女が出てきます。みんなで合わせて合唱をしたりする。もちろんみなさんプロです。壮観です。オペラはスケールが違う。そして、衣装も凄いのです。有名な方がデザインをされているようで、ソフィア・コッポラの「マリー・アントワネット」のように、華美すぎずどこかモダンさを感じさせるのですが、非常に壮美であります。主人公ヴィオレッタが、終盤に着る衣装の肩には、カラフルなお花のような飾りのあるもので、すごく「かわいい」なと思いました。衣装のデザインはソフィア・コッポラではありませんが、彼女の「ガーリー」さも感じました。

そしてオペラの主役である「歌唱」も当然の如く、素晴らしかった。主人公を含め、終始に歌唱をしているのですが、どれも常人とは思えない、凄まじい歌ばかりです。高音で長く伸ばし、音符は細かく震えて、激しい感情を伝え、強い印象を心に刻んでくれます。それがずっと続く、字幕では、悲しみだけではない、喜びすらも、その歌唱で表現をするのです。

しかしそこで伝えられる物語は、とても人間的であり、普遍的なものです。ほんとうにわかりやすい。むつかしい比喩などはなく、そのままの感情だけが込められている、と感じました。

最後には、ヴィオレッタは結核に罹ってしまう。愛しのアルフレードと再会をし、幸せになることがわかった。その喜びの頂点を歌った瞬間、ばったり倒れ、死んでしまいます。

ハッピー・エンドではないことは、自分に取って、楽しいことです。が、一般的にはそうではないでしょう。ハッピー・エンド、バッド・エンド、どちらも僕にとってはどうでもいいことです。

映画に限らず、小説、ドラマ、音楽など、全ての物語に対して、「結末でその評価をする」ということは愚の骨頂だと、自分は思うのです。「椿姫」も「娼婦が恋して最後は死ぬ」という話の筋がメインだけれども、感じたことは、主人公たちの心の揺れ動き、ということでした。

まえむきさん