「ガリバー教訓記」ガリバーの大冒険 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
ガリバー教訓記
嵐に遭った船から海に放り出され、ある島に流れ着いた男ガリバー。
そこは何と、小人たちの島だった…!
余りにも有名な『ガリバー旅行記』を初めて実写映画化した1960年の作品。
『ガリバー旅行記』は『ドラえもん』でネタになったりジャック・ブラック主演版を見たりしているが、そのほとんどがパロディーや大胆アレンジで、こうやって『ガリバー旅行記』をしかと見たのは初めてかも。これも作品自体は昔から知ってるけど、実はしっかりとは見た事ない作品の一つ。
小人島探訪記はよく知られているが、原作は4部構成。映画は2部まで。
単なる冒険ファンタジーではなく、風刺や皮肉も込められていて、なかなか深い。
“大男”ガリバーと小人たち。
本編、合成、ミニチュアを駆使した特撮映像が楽しい。何だかこれらは日本の特撮演出を彷彿させる。
特撮はレイ・ハリーハウゼン。今作は合成演出が多く、お馴染みのストップモーションはほとんど無いが、“巨大リス”や“巨大ワニ”で堪能出来る。
小さな国で英雄に。素直に童心になれるユニークさとワクワク楽しさ。
普段ダメダメなのび太くんでも英雄になれるが、ガリバーの場合は、平凡な世界から抜け出した全く全然別の世界。
小人たちの力になったり小人同士の国の戦争を止めたりして称えられ、交流を深めるも、小人の国の王様は自分より人気のある者は目の敵。側近は入れ知恵や言いなりばかり。
妬みや人の心の狭さ。小人同士の国の戦争の原因も卵の割り方を巡ってのいざこざという愚かさ。
追われ、船に乗って脱出したガリバーが次に辿り着いたのは…
今度は自分が小人に!
そこは、巨人の国だった…!
特撮演出も世界観も価値観も今度は真逆。
何でもこの国では、小サイズは稀少。王様のコレクションとなり、重宝に扱われる。
今度の国は安泰…かと思いきや、
巨人たちは図体の割りに無知。医師であるガリバーの博学や化学の知識が“魔物”とされる。
またしても追われ、次に辿り着いたのは…。
最初は寵愛されていたのに、ひと度偏見を持たれると、格好の迫害の標的。
小人の国でも巨人の国でも。…いや、私たちの国でも。
ヒロインとのロマンスはちと蛇足で、ラストの台詞も最もらしいけどチープではあるが、
気軽に楽しめるし、風刺もある、“ガリバー教訓記”。