ザ・ディスカバリーのレビュー・感想・評価
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あらすじを読んだ時の期待と比べると……
中盤までは死後の世界の正体とは? という話が軸になっているが、最初の死体からの映像を観た時点で生前の後悔絡みのなんかなのね、というところはわかってしまう。「これは死後の世界じゃなくてただの記憶だ!」「いやいや死後の世界だ!」とかやってたが、どちらにしても拍子抜け。
大した納得感もなくヒロインとくっつくのも安い展開だな〜と思ってしまう。ループしているからということで多少は説明できると思うが(でもループの記憶はなかったんだよね?)、それが明かされるのは終盤。
「死ぬと別次元の過去に戻ってやり直せる」という真相だけは作中のいろいろなご都合主義を説明していて一瞬感心したが、それならヒロインもあのまま自殺させておけば望む世界(息子を事故死させなかった世界)に行けたわけで、主人公の行動は全て自己満足でしかないということになる。最初からそれを意図したストーリーならニヒリスティックで面白いが、そういう感じもしない。
結局主人公もガンガン自殺してループしまくってましたという話で、本筋はタイムループものでしかない。自殺者カウンターを意味ありげに表示していたのは自殺の是非でも問うためかと思ったが、なんとなく不穏なだけで大した意味はなかった。
音楽が妙なのも気になる。パーカッションを多用しギロなんかを鳴らしてる曲があったが、不気味というよりはジャングル奥地の集落のシーンか? という感じの珍妙な曲調だった。まだ曲がないほうがマシ。
『綺麗な可愛い子が自殺すると悲しい』こんな台詞は何故あるのか?
単なる死生観を哲学的に描こうとした話であるが、宗教的な基盤がキリスト教故に、復活は当たり前。だから、出鱈目なストーリーになってしまっている。仏教的に考えれば、輪廻転生と言うものがある。だから『パラレルワールドが存在して』なんて出鱈目な死生観は今更登場する訳もない。
まぁ、現実的に見れば、この集団はカルトな集団で、この科学者は18世紀末に登場したジョン・ハンターの様なマッドサイエンティストだ。彼はジキル博士とハイド氏のモデルと言われている。
追記 『死後の世界がある』ってどこで証明されたのか?まぁ、どうでも良い事だが。
また『自殺者に敬意を払う』と言った台詞が出て来るが、その意味が理解出来ない。つまり、死んで別の世界に行ったのだから、現実の社会の負担を減らした。故に、敬意を表せ!ってことなのだろうが。そんな出鱈目な話にして良いのだろうか?これではPLAN75と一緒だ。
【他SF作品との比較】「心身一元論」+「マルチユニバース」?
『トゥモロー・ワールド』風の、ブルーな映像と、鬱々しく諦めに満ちたディストピア風の近未来世界。
質の高く有名なキャストを採り入れた。派手さはない。独白的・1人称的。
物語構造は『ミッション:8ミニッツ』+『インセプション』+『13F』に近い。だが肉体を「現実世界」に残したまま、意識だけが精神世界に行くのではない。死ぬと肉体も精神も別の人生へと移行するので、心身二元論的な『ミッション〜』『インセプション』『13F』とは異なる。
また『バタフライ・エフェクト』や『タイムマシン』のような、意識を保持したままの肉体が1つの時間軸を巻き戻して行ったり来たりする作品とも異なる。というのも別の時間軸へと、肉体も精神も移行するように思えるからだ。
心身一元論的・唯心論的であり、マルチユニバース的でもある。
ブルーの映像と静かだが悲惨な作風にとって「死」という要素は不可欠だが、唯心論的立場に立ったからといって、マルチユニバースを死で繋ぐ必然性はない。
鑑賞前は「死後の世界」に気を取られるけれど、振り返ってみると本質は「マルチユニバース」や「観念論VS唯物論」「心身一元論VS二元論」という科学哲学的、SF的問題であるように思う。
が、死後の世界をどう表現するのか?と興味を惹き、鑑賞させることには成功している気がする。
SF映画に新たなパターンがまた1つ追加された?
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