ハイドリヒを撃て!「ナチの野獣」暗殺作戦のレビュー・感想・評価
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ナチとチェコスロバキア
連合国に見放され、ナチスドイツのポーランド侵攻前に侵略されたチェコスロバキアのレジスタンス実話。 ユダヤ人大虐殺の主要権力者の一人、ハイドリヒが占領下のチェコスロバキアで行っている粛清に危機感を持ったイギリスはパラシュート部隊を派遣、暗殺を企てる。 後半は展望がないためとても重苦しい。
新宿武蔵野館にて観賞
「類人猿作戦」については、既に『暁の七人』が描いている。
怖気が走るほど非道なナチスの統治下にて任務を遂行する心細い雄壮さと、それにより受ける凄絶な対価が描かれ、胃がキリキリと痛み底冷えする傑作だった。
見た後で知ったが、『暁の七人』は史実をかなり忠実に描いていた。
本作は史実から、おそらくだが色々と脚色が施されている。束の間の逢瀬、それからの悲恋などドラマティック過ぎるくらいだ。
傲岸で激しやすいヨセフ(キリアン・マーフィー)と、情に厚いヤン(ジェイミー・ドーナン)とキャラクター付けも分かり易い。
裏切り者チュルダも大事なところでヘマをする後付けの人物造形が為されている。チュルダの裏切る理由は金と怯懦で史実通りだが、「あの時代、誰もが立派でいられなかった」という感じの『暁』と比べて冷淡だ。
レジスタンス夫人の亡き後の斬首なんかも史実とおりだが、リアルの取捨選択がサディズム的で少々嫌な気分になる。
反比例して作戦の描写は非常に雑。
『暁』で丁寧に追われた暗殺へのトライアル・アンド・エラーは大幅に省かれ、重要なハイドリヒ暗殺の場面も『暁』とは比較にならないほど史実の再現度は低い。
と観賞しながら『暁の七人』と比して不満ばかりを感じたものだが、最期の境界包囲戦に於いて、一気に本作に引き込まれた。ショーン・エリス監督の本領は此処にあったか。
場所の利を活かして大勢を圧倒する姿に説得力があり、また銃撃戦の迫力においても『暁』を大きく上回る。
凄絶なその姿は、前半鈍かったジェイミー・ドーナンやハリー・ロイドといった役者も光らせている。
この戦闘シーンだけでも劇場で観る価値のある作品だ。
…だがしかし、何故か作り手はこの戦闘シーンに、テンポ悪くレジスタンス首謀者の自決を挟んで戦いへの没入を妨げるのだ。何故に。
地下で水攻め中の自決も、過剰にロマンティックで結局気が削がれるのだった。
そんなにドイツの右傾化が気になるのか?
ここ数年極端にナチス関連映画が増えたように感じる。
特に今年は多い。
今年筆者が観ただけでもナチスが登場した映画は、『ヒトラーの忘れもの』『アイヒマンを追え! ナチスがもっとも畏れた男』『マリアンヌ』『アイヒマンの後継者 ミルグラム博士の恐るべき告発』『ヒトラーへの285枚の葉書』『ダンケルク』『プラネタリウム』と7本を数える。
このうち『ヒトラーの忘れもの』だけが、デンマークで地雷撤去をさせられるドイツ少年兵の悲哀を描いているが、それ以外はナチスの横暴さを連想させる作品ばかりだ。
もちろん本作もその系譜に連なる。
なんとなくナチス映画が増えている理由は想像がつく。
ドイツも含めたヨーロッパ各国、そしてアメリカでもナショナリズムの傾向が強まっているからだろう。
特にドイツでは前回の選挙で「ドイツのための選択肢」(AFD)という政党が94議席を取って第3党となる大躍進を遂げた。
移民制限を政策に掲げるAFDは欧米各国で「ナチス」というレッテルを貼られて忌み嫌われているが、ではそんな彼らがなぜこれほどドイツ国民から支持を集めたのだろうか?
メルケル首相の難民受け入れ政策により2013年は17万人、2014年は20万人、2015年は110万人、2016年は30万人の難民がドイツに流入している。
難民のほとんどが青年男子だが、ドイツ語を話せないために、75%が長期失業して生活保護を受けている。
ドイツ連邦統合省の統計によると、今後5年間で難民や移民の1/4〜1/3しか労働市場に参入できず、200万人以上がドイツ国民の税金で生活保護を受けるのだという。
また昨年大晦日にケルンでアラブ人・北アフリカ人を主体とした1000名によってドイツ人女性に対する集団性的暴行・強盗事件が起きた。被害届だけで500件以上にのぼっている。
このような状況下ではむしろAFDが票を伸ばさない方がどうかしている。
またAFDは「移民排斥を訴える極右政党」とレッテル貼りされているが、彼らの政策を具体的に見ると実際は全く違う。
高度人材の受け入れに反対はしていないし、犯罪者の強制送還、帰化した者でも重犯罪者は国籍剥奪、難民の受け入れ数の上限設定など至極真っ当なことを公約にしている。
AFDの躍進により、さしものメルケル首相も年間の移民者数を20万人に制限すると表明し始めた。
実は映画業界はマスコミがスポンサーであるケースも多くリベラルな思想や場合によっては極左に近い思想の影響下にあると思った方がよい。
ヨーロッパ映画はハリウッドほど政治的ではないと思っていたが、昨今の映画制作の流れを見ているとやはり政治的であることがわかる。
日本では今年から来年にかけてまだまだナチス関連映画が上映されるし、今後も世界各国で制作が続くと思う。
たしかにナチスのユダヤ人虐殺は許し難い蛮行であるが、こうもナチス憎しの映画が続くとかえって裏の事情が読み取れてしまう。
またそもそもナチスの台頭も、ドイツが第一次大戦の敗戦国となり経済がボロボロになったことにより、その巻き返しとして起きた現象である。
緊縮財政という自分で自分の首を絞めるアホな金融政策を取るドイツで自国民が第一になるのは当たり前の流れである。
なおAFDは移民に反対しているだけではなく、EUからの離脱、緊縮財政への反対も唱えている。
世界は今、金・人・物が無制限に動けば動くほど良いと考えるような極端なグローバリズムに嫌気が差し始めている。
さて本作で描かれているようにドイツ高官で唯一暗殺されたのがハイドリヒになるが、その報復でチェコでは13000人もの人々が殺されてしまったため、これ以降ドイツ政府高官の暗殺計画は立案すらされなくなる。
またハイドリヒはナチス内でも嫌われていたようで、陰謀説まで存在するようである。
本作の本編が始まる前に、例によって「実話に基づく」と断りが入る。史実を大幅に変えてしまう作品も多いが、本作は比較的史実に忠実なようである。
なおナチスに密告をして仲間を売ったカレル・チュルダは戦後にナチス協力の罪で処刑されている。
このエンスラポイド(類人猿)作戦を扱った作品は他にフリッツ・ラング監督の『死刑執行人もまた死す』がある。
白黒映画であり、筆者が観たのは大分以前なので内容も殆ど記憶していないものの、本作のように悲壮な印象がない。
本作はナチスの非道さや暗殺に関わったチェコ人たちの悲惨さが強調された作品になっていると思う。
後にチェコ人の大量虐殺を招いたことにより暗殺部隊の行動は必ずしも英雄的であるとは言い難く、本作でもそこは意識された展開になっている。
ヨゼフ・ガブチークを演じたキリアン・マーフィーは、ダニー・ボイル監督作品の『28日後…』を観て以降、ケン・ローチ監督作品の『麦の穂をゆらす風』でIRAのメンバーを演じたり、その他『バットマン・ビギンズ』から最新作『ダンケルク』までクリストファー・ノーラン監督作品によく出演しているし、『サンシャイン2057』や『白鯨との戦い』、登場人物全員で騙し合い・殺し合いをした『フリー・ファイアー』など、観た映画全てで何かしら忘れ難い演技をする俳優だと思う。
一方、相棒のヤン・クビシュに扮したジェイミー・ドーナンは筆者にはあまり演技がうまいとは思えず印象にも残らない。どこかで見たことはあると思いながらも上映中は全く想い出せず、後に『フィフティ・シェイズ』シリーズの主役であることがわかるぐらいである。
ドーナンの相手役を演じたシャルロット・ルボンはすぐに『イヴ・サンローラン』や『ザ・ウォーク』に出演していた女優であるとわかった。
他には『裏切りのサーカス』や『奇跡がくれた数式』に出演していたトビー・ジョーンズが本作においても相変わらずいい味を出している。
政治的な意味合いでナチス関連映画が多く制作されるのは結構だが、内容がステレオタイプの作品が多作されればされるほど飽きられていくものだから、かえって逆効果になることは制作者側も理解した方がいいだろう。
チェコ人の誇りのために
愛国者として、テロを実行するのだけれど、効果が、あるのかどうかわからないことを、どうしてもする気持ち… わからない。 抵抗がこんな形でしかできなくなる前に、しなければいけないことが今ならある。
愛国心とは
主人公は軍人であるが、その周りの人々は一般市民。 彼らの行動には軍人には軍人の、市民には市民の自問がある。 共通するのは、清い愛国心があること。 愛国心というのは、左巻きの馬鹿どもが言う狂気ではなく、右巻きの馬鹿どもが言う敵対する者は蹂躙するというものでもなく、自分から手を上げることはないが、攻められれば強固に抗うという、この映画の主人公達の持つ志がそれだと感じた。 ネタバレになるので具体的には避けるが、全員が全員、最期まで逃げずに最善を尽くし、自らを犠牲にして抵抗している。 日本人にこれができるだろうか? 言うまでもなくナチは悪であり、この映画を見てナチに怒りが湧かない人間はいないと思う。 が、このような作りの映画(ストーリーはでっち上げだが)で日本をナチのように描き、自国民を洗脳している国が大陸や半島にある。 最近は銅像などを使って、他国民まで洗脳にかかっている。 今日本は確実に外堀を埋められ始めている。 それが完了したとき、日本はこの映画のチェコのようになるだろう。 その時、どうするか? そうしないためにどうするか? まずは選挙に行きましょう。 その前にこの映画を観ましょう。 平和は当たり前ではなく、国民が作るものであり、ちゃんと作っていても裏切られることもあるのである。
とにかく、カッコいい
何度も映画化されている実話。 当時の彼らにしたら正義のためというより生きるか死ぬかの戦いだったのだろうが、それでも、権力に抗って闘う人達はカッコいい! 匿ってくれていた教会での銃撃戦が見事。 2人の主人公ヨゼフとヤンの関係が、途中で入れ替わる感じも良い。 「フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ」でエロい主役をやってたジェイミー・ドーナンもかっこ良くて、良いイメチェンになったと思った。 それにしても近代のポーランドはたくさんの悲しい歴史を背負っているのだと改めて実感。
国が目指すべき未来に自分は何が出来るのか?
ヒトラーの暗殺作品は何本も見たがハイドリヒの暗殺作品は始めて見た。 これは史実作品だからその歴史から教訓にすべきなのだろうが、特にこの愛国心という考え方に自分も含め我々日本人は疎い。 しかし、現実に日本上空をミサイルが飛び、憲法改定が叫ばれているのだから、映画鑑賞で終わらせられないだろう。
静かに狂おしい哀しみ
歴史とは過去でも知識でもない、痛みのある現実だ。と、痛烈に教えてくれる物語。やはりナチス党は化け物のように描かれているのだが、主人公サイドも暗く輝いて、危うさや狂気がみてとれる。必死な時代の痛烈な熱量が、哀しげな笑顔が、少年のバイオリンの調べに乗って刺さってくるようだ。 今年はこの手の上映が近所で多く、嬉しい限り。しかと刻んで生きていきたい。
(イギリスに翻弄される)チェコ亡命政府
チェコ亡命政府による不条理な指示。 最後のクレジットを観るとイギリスに翻弄されたのかなと感じましたが、皆んな立場は違えど、愛する祖国に守ろうとする。 大戦後も時代の波に翻弄された東欧諸国をもっと知らなければと感じさせられました。 史実をこれだけのエンターテイメントに仕上げた脚本、監督、カメラワークはあっぱれ。 是非とも映画館で観るべき。 しかし、平日の夕方ながら誰も居ない映画館は寂し過ぎました。もう少し取り上げて欲しかったな。
全体主義の恐怖、チェコの悲劇を学ぶ
ナチス・ドイツの恐怖をあらためて目の当たりに。本当にチェコという国は繰り返し悲劇に見舞われているが、そのひとつを目撃したかのような迫真の映画だった。映像の感じがちょっとざらざらしたような古い感じがあって、迫真さに寄与していたように思う。気持ちに余裕がないとこの手の戦争映画は観られないので観る人を選ぶ映画だが、是非とも若い方々に目を背けずに観て欲しい。
実話の重さ
重く息苦しいが、それはナチの時代の空気を写しているのか。実行までの緊張、参加者の逡巡、いざ実行したあとの客観的には無理としか思えない脱出への葛藤、達成感のなさ…すべてが実話だという事実とともに迫ってくる。映画としても傑作。
悲惨な最期
史実を知っているから、最後は悲惨なのはわかっていたけどよりナチスの非人間的な行為と恐怖がひしひしと伝わる映画。暗殺部隊のミッションと暗殺の報復として、多くの事件と関係性がない人達が殺されてしまうその葛藤がよく描かれている。暗殺部隊に協力した女性たちも強かった。密告者は戦後処刑されたらしい。
惨すぎる真実
連合国から見捨てられたチェコに於けるナチスの蛮行。 権力を手にした人間が狂気に支配され蛮行に走ることの恐怖、あまりに惨い史実に戦慄を覚えた。 同じ題材を扱った『あかつきの7人』ほどの感動は覚え無かったが、迫力ある映像に圧倒されるものであった。 この先も平和が続くことを願わずにはいられないものでした。
現実の世界にヒーローはいない。
現実の世界にヒーローはいない。 それをわかっているうえで、だからこそヒーローを夢見るし、スーパーヒーロー映画を楽しむのだけど。 現実はかくも冷酷で残酷だ。善良な隣人が銃を持ち、仲間を密告する。信念を持って起こした行動が原因で無関係の人々が大量に死んでしまう。 自分が当事者になったら何を選択し行動するだろう?と鑑賞中、ずっと自問していた。
チェコの一分(いちぶん)
1942年のある夜明け、チェコの田舎町。
イギリスに亡命したチェコ政府から7人のパラシュート隊員が送り込まれた。
彼らの使命は、ナチス政権下で地下に潜ったチェコ・レジスタンスと協力し、ナチス・ナンバー3・ナチス親衛隊ラインハルト・ハイドリヒ大将を暗殺すること。
直接の暗殺任務は、ヨゼフ・ガブチーク(キリアン・マーフィ)とヤン・クビシュ(ジェイミー・ドーナン)が担う。
まずは、ハイドリヒの日々の行動を調べ上げ、最も適切な場所と時間を探ること。
しかし、レジスタンス組織の中にも、暗殺後の報復を恐れて、二の足を踏む者もいる・・・
というところから始まる物語で、1970年代にルイス・ギルバート監督『暁の7人』で描かれたのと同じ題材。
前回はアメリカ資本だったが、今回は本国チェコ主導でイギリス・フランスとの合作。
監督のショーン・エリスをはじめ主要キャストもイギリス人で英語発声ではあるが、ここに描かれたのは「チェコの一分(いちぶん)」。
映画冒頭で簡単に字幕のみで語られるが、1940年にナチス・ドイツに侵攻されたチェコは無抵抗でナチス政権に下ってしまう。
その際、チェコ政府はイギリスへ亡命して亡命政府を建てるが、チェコは世界から親ナチスとみられてしまう。
そして、1942年の時点では、ナチスの懐柔製作もあり、国民の多くはナチス政権下でよし、といった状況になっている。
ここいらあたり、ヨーロッパ史では知っていて当然の事柄なのかもしれないが、あまりに簡単に説明されるだけなので、ここんところがわかっているかどうかで、ハイドリヒ暗殺を実行するか・しないかを逡巡するレジスタンスたちのジレンマを感じる度合いが異なってくる。
個人的には、もう少し市民の描写などで、ナチス政権下でもよし、となりつつあるのを描いてほしかったところ。
現状は戦時下・ナチス政権下であっても、どうにか生活できる、生き延びることができる。
ただし、それは、チェコという国の、チェコ国民なのか・・・
しかし、ハイドリヒ暗殺などという究極的な抵抗を行えば、無辜の生命が脅かされることも目に見えてる。
チェコ国民としての信念を捨てるかどうかの決断。
結果として、犠牲は多くとも、チェコの一分(いちぶん)は守りとおす、というもの。
そんな中で進むハイドリッヒ暗殺計画。
ヒリヒリするような緊迫感である。
ただし、実行に至るまでのサスペンスは、さらに増すことができたようにも思う。
ハイドリヒの日常の監視などは意外にあっさりとしている。
また、女性レジスタンスとの遠慮がちなロマンスもある(個人的にはロマンスがある方が好きなのだが)。
映画の見どころは暗殺シーンというよりも、その後。
むしろ、暗殺後に力点が置かれている。
失敗したかにみえた暗殺。
ナチスによる実行犯のあぶり出し。
レジスタンス仲間の裏切りと、ナチスの執拗な拷問。
最後の最後まで続く、7人の徹底抗戦。
終盤描かれる教会での籠城戦は、これでもかこれでもかの迫力。
久しぶりに、力のこもった第二次世界大戦実録映画でした。
見分けがつかない
序盤で顔のアップが少なく、顔の見分けに難儀した。気軽に人に気を許しすぎで今ひとつ緊張感がない。
小説HHHを読んだ身としては、エンスラポイド作戦を描くには2時間では足りない。Netflixでドラマにしてくれないだろうか。
苛烈な報復を思うと、やるべき作戦だったのかはわからない。東部前線はドイツが敗走を始めた頃だろう。連合国はリディツェ村の壊滅を受けて本気になったとも言われているが…。アタが安らかでありますように。
それにしてもドイツ兵が無防備に突撃しすぎて斥候兵がかわいそう。。
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