蜷川幸雄シアター「身毒丸 復活」のレビュー・感想・評価
全3件を表示
THE 寺山修司の世界
素晴らしかったです。
寺山修司の世界が具現化された舞台だったと思います。冒頭の演出であっという間にその世界に落ちていく感じが最高にワクワクしました。
世の中の常識を代表するようなお父さん、差別と偏見と世間体にまみれているこの人の末路は悲惨です。一見素直に見えて腹黒い弟はお父さんと同類でしょう。
身毒丸を演じた藤原竜也の演技は圧巻でした。この人は天才かもと思ってしまった。母に眼を奪われ、反発していたのに惹かれていく。最後は2人で修羅の道か。
悲しいでも嬉しいでもない、感動の涙は久しぶりでした。もう一回見ようかと思う作品。心から、舞台で見たかったなぁと思います。
苦しい愛憎劇
大人になれない身毒丸と継母、家族の物語。
死んだ母を想うがあまり継母を認められない身毒丸だけど、母売りの場では一目で彼女に魅入られたような素振りを見せていて、その後は母を想いながらも何処かで彼女に惹かれる気持ちの狭間でもがいていたように思えた。
体裁を気にする父親と継母と連れ子の弟との家族ごっこにも入ることは出来ず苦しむ身毒丸、継母をことごとく拒絶する様は愛に飢え意地を張っているようで痛々しかった。
最後は家族も崩壊、しかし身毒丸と継母はやっとお互いを見つめ合い抱き合い二人で歩いて行く。
役者陣の鬼気迫る強烈な演技と演出がエグくて壮絶でただただ惹きこまれた。
藤原竜也は26歳、綺麗で儚げで でも全身で演技する姿は誰よりも大きく力強くてドラマや映画で見る彼とはまた違った魅力に溢れていた。
白石加代子、最初は凄い顔したオバさんだなーなんて思っていたけど艶やかで狂気溢れる演技に頭をガツンと殴られるように感じた。
セリフや演出が全て理解出来たわけではないけど、もうひたすら面白かった。
劇団四季を観ても小さな劇団を観ても、舞台特有の大きな声と抑揚と演出がどうしても苦手だった。
今回この舞台を映画館のスクリーンで観て、これはナマで見たかったと心から思えた。
多分ストーリーや演出で好き嫌いはあるけれど面白いものもたくさんあるはずで、これから色々観に行きたいと思う。
ただ、もう蜷川幸雄演出 藤原竜也出演の舞台を生で観ることは叶わないんだと思うと残念極まりない。
全3件を表示