「自分ごとに感じない。ということ」リバーズ・エッジ dekamoさんの映画レビュー(感想・評価)
自分ごとに感じない。ということ
二階堂ふみの初のフルヌード作品と聞いて鑑賞。我ながら動機は不純だが、個人的に新鮮なジャンルを鑑賞することにもなるので期待もした。原作は女性向けファッション雑誌で連載していたとのこと。ヘルタースケルターの作者さんというのは鑑賞後に知った。鑑賞日は公開から10日後ほどで、カルチャー好きっぽい女性が10人ほどいた。率直に、普段観ないジャンルの映画も映画館で集中して観ると面白いものだなと感じた。
本作で一貫している演出として、画面サイズとインタビュー映像がある。物語の設定である1994年(たぶん)を表現するために、画面比率がアナログテレビ的な4:3になっていた。正直、映画館では世界に没入できるようなシネスコが好きなんだけど、しばらくしたらはそう気になることもなかった。冒頭シーンから謎のインタビュー映像で、最後の最後でこれが事件後のインタビューらしいことが分かる。随所のほかキャラクターのインタビューは個人の紹介にもなりつつ物語を深めていく。というか直接的に説明されるという感じ。観音崎の子分みたいな夜の工場で釣りをする二人が噂話するシーンは全体のテンポを作っていたし、ほっこりした。
二階堂ふみ演じるハルナは、タバコの煙のように漂う存在に見えた。周囲のキャラクターの意思に振り回されるように生きていた。周囲は衝動的に動いてばかりだが、彼女は何か考えていて、暴走はしない。むしろ、誰かのストッパーである。肝心な二階堂ふみのおっぱいは改造された雰囲気が強く、あんまり重要な場面にもなっていなかった。不感症っていうことなんだけど、感じて色っぽいところを観たかった。土居志央梨演じるルミがあちこちで激しめのセックスをしたり、吉沢亮演じる山田くんもおじさんにご奉仕したりするので、全体のバランス的に脱がない選択肢はなかったのかな…。
山田君っていう美少年なのに全裸でボコボコにされるっていう存在がありえない気がして、ずっと違和感があった。旧校舎のロッカーに失神状態の上に全裸で閉じ込められるって登場シーンは衝撃過ぎて笑った。あそこに助けに行ったわけだからハルナは本質的には正しいことを目指している人なのだろう。SUMIRE演じる吉川こずえの過食シーンも衝撃だった。同列の女性が一人でLサイズのポップコーン買ってたからこれ見ながら食べきるのつらいだろうなと思った。トイレや床で素手でというように雑に食事する人間の精神の乱れはやはり想像しやすいなと思う。彼女の存在感は好きだった。山田君の好きな男を簡単に話しちゃうの笑った。新しい死体が見つかった時に生き生きしてたのがとてもよかった。
ルミには何か賞をあげたい。二階堂ふみより段違いに魅力的な躰をしていた。顔面とか普段の言動はとても好きになれないなと観ていたのに、ベッドの上での存在感には圧倒された。射精後のルミの顔と河原の白骨遺体の頭蓋骨でシーンチェンジしたのは見事すぎて大笑いした。後半絞殺されかけるし、姉からおっぱい切り裂かれるという末路への予兆として見事に作用してた。姉もちゃんとキーキャラクターでよかった。
観音崎がルミの死を目にして、山田君らと歩調があってくる展開が良かった。そもそも山田君や吉川こずえは河原で見つけた遺体から自分の価値観を変化させた。ハルナもまたしかり。人の死を目にして生き方を考える子どもたちに共感する。何かしらの人の人生が自分の生き方に影響することって大いにある。私の場合、2013年のやなせたかしの死は大きかった。このころNHKの特集で爆笑問題相手に92歳でインタビューに答えたり歌ったりしてる姿が印象的でその人生にあこがれを抱いて観ていた。直接的に体験したわけではないが、このことは自分の人生設計の重要な事柄だと思っている。本作では、白骨遺体がもろに登場することの衝撃が説得力を増していてよかった。田島さんは重要なオチではあるけど、もはやダメ押しの展開で満腹になった。
小沢健二の主題歌はいいけど、これ程しっかり今の若い人で90年代を作りこんできておじさんの歌を聴かされるのはどうかと思った。世代じゃなくてしっくりこないということかもしれないけど。
あと、キャラクターの深堀展開という観点から、ルミの姉の展開はよかったけど、ハルナとルミのもう一人の友達の立場がいまいちに感じた。
ソラニンとどこか似た感じなのかな。
雑記して改めて、いろいろ考えながら鑑賞できてよかったと思う。