「思春期特有の欲の暴走と愛の定義」リバーズ・エッジ ぷいにゅさんの映画レビュー(感想・評価)
思春期特有の欲の暴走と愛の定義
素晴らしかった!
若者が大人となる過程での欲に忠実に暴走する姿は、何故こんなにも見ていて清々しいのだろう。
この登場人物たちと同じように、自分自身に悩み葛藤し暗い思春期を過ごした人にはこの作品は深く突き刺さるのではないかと思う。登場人物が心の穴を埋めたくてそれぞれに猛進するその苦しさがめちゃくちゃわかってしまう。世間的に悪いことだと分かってても、自分の体を大切にしなくちゃいけないと分かってるけど、なにかを渇望して暴れている感じ。
全体的に「愛とは何なのか」という副題を感じた。ルミちんや観音崎が愛のない体の関係を重ねる中、山田くんは校庭で好きな人を見て「いるだけでいいんだ、彼がいて僕がいて、それだけでいいんだ」と(確かそんなセリフ)言っていた。見返りを求めないただその存在が愛おしく大切、それこそが一番純粋で実直な愛であると感じた。本来愛を感じるはずのセックスという行為、本作ではみな寂しさを埋めるためだけのものであり(特に観音崎、ルミちん)そこに愛などなかった。インタビュー部分でボロボロで入院しているルミちんに「愛とはなんだと思いますか?」と聞いたシーンは「おい!やめろー!ルミちんに聞くな!可哀想やろ!」と思わず止めたくなった。
吉川こづえは食べるという行為で心の穴(それが寂しさかどうかは微妙)を埋めていた。職業柄、スタイルを維持しなければならない彼女が過食嘔吐をするというのは、なんというかありがちではある。ほかの登場人物がわりとわかりやすい中一番何を考えているのか見えてこなかった。が、ハルナと一緒にいる時、ほかの登場人物といる時よりもなんだか嬉しそうで可愛かった。(ハルナに好意を持っていたから当然ではあるが)個人的にこづえ役のSUMIREがなんとも言えぬいい顔をしていて、好きだなーと思った。
愛、憧れ、僻み、寂しさからの逃避、それらに直面した彼らは互いに交錯し毎日迷いながら生きている。そんななかで「何も変わらない」台風の目のようなハルナ。何も変わらないハルナに登場人物たちが何かを感じ求めながら生きていた。そんなハルナが唯一感じていたのは「死ぬこと」であると思う。可愛がっていた猫達がミートボールにされたときも、ルミちんの赤ちゃんがいなくなった時も、田島かんなが死んだ時も、ハルナの心は動いていた。吉川こづえも何を考えているのか分からないが、ハルナも大分何を考えているのか分からない。
この作品を何度もみて、自分の淀んだ青春時代を思い返し救済されたいと思う。とてもいい作品でした。