劇場公開日 2018年3月17日

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修道士は沈黙するのレビュー・感想・評価

全24件中、21~24件目を表示

3.0神の声に気付くための沈黙

2018年3月25日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

沈黙の誓いを守る修道士が主人公ですが、思想や哲学や宗教を表現する手段として音楽 絵画の他、数式や経済、運動 食事 セックス、IT技術の使い方、ペットや野生動物との関係性まで会話以上に雄弁な表現が登場して興味深いです。

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zita

4.0金融資本主義と神の許し

2018年3月24日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

知的

難しい

 貨幣は経済の血液という。血液は酸素や二酸化炭素だけでなく、いろいろなものを運ぶ。それで生物の活動や新陳代謝が成り立っている。貨幣も同じように社会の隅々に行き渡り、経済活動を容易にする。物々交換に比べて貨幣のほうがずっと効率的なのだ。
 何にでも交換できる貨幣は、たくさん集めることで交換できる物の種類や量が飛躍的に増加する。つまり金持ちの誕生である。そして貨幣を他人に期間を決めて貸し出し、利息を取ることを思いつく。金融のはじまりだ。
 資本主義が発達して貨幣に資本という別の価値を生むと、資本が金融と結びついて金融資本主義となる。資本は付加価値を生み出すから、金融は資本と資本、貨幣と貨幣の間を渡り歩くだけで莫大な利益を得ることができる。マネーゲームである。
 インターネットを頂点とする通信技術の進化によってマネーゲームはスピードアップしていく。と同時に、金融強者と金融弱者、ネット強者とネット弱者などの要因で、金銭的な格差もスピードアップする。持てる者は格差を固定化して変わらぬ夢を見続けようとし、持てない者は格差を解消する夢を持ち続ける。
 持てる者は権力を掌握していて非常に有利だが、数は持てない者が圧倒している。持てる者はいつか滅びるが、持てない者の中から次の持てる者が現れる。それは歴史の通りである。

 さて、本作品は格差を巡る覇権争いや権力闘争の深謀が、にこやかなうわべの裏で火花を散らす国際会議の開催中に、利害の外にいる聖職者がどのようにかかわり合うかを静かに描いている。神という絶対的存在に対して人間の価値観はなべて相対的である。今だけ、自分だけ、金だけという刹那的な価値観を修道士から一喝されると、頭脳明晰な出席者たちは、まさに頭脳明晰であるが故に反論の言葉を持たない。
 金融資本主義が世界中で固定的な格差を生み出し続ける世の中で、相対的な価値観に倦みはじめるのは、貧乏人よりもむしろ金持ちだ。今だけ、自分だけ、金だけという金持ちに神の許しを与える聖職者はいないだろう。ある意味胸のつかえがおりるような、爽快感のある映画であった。

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耶馬英彦

2.0告解

2018年3月17日
Androidアプリから投稿

寝られる

ドイツのホテルでG8財務相会議が行われる前日に国際通貨基金理事の誕生パーティーが行われ何故か絵本作家やロックミュージシャンやイタリア人修道士が招かれたところから巻き起こる話。

誕生パーティーの後理事の部屋に呼ばれて修道士が訪れると告解を聞くことに、翌朝ビニール袋を頭に被った理事の死体が発見されるというとんでもない展開。

自殺か他殺か告解の内容にどんな秘密が…という展開かと思ったら、あっさりと死因はわかり、G8の会議での審議内容と票の動向を知っているであろう修道士とメンバー達との駆け引きという流れに。

のらりくらりお手本の様なことを言って明確な答えをかわしたりはぐらかしたり誘導したりで、そこに面白味は確かにあったけど、どうでも良かったり余計だったりな登場人物達のキャラ設定が都合良いし煩わしい。

修道士の言動も痛快さや熱さはなく、面倒臭くしているだけで何もなくても結論に影響はなかった様にも感じてしまった。

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Bacchus

4.0日本では決して生まれない、極上の社会派ミステリー

2018年1月28日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

笑える

知的

キリスト教と経済
幻想の上に成り立っている…かもしれない現代社会へ
唯一鉄槌をおろせるのは
おおいなる存在の「沈黙」だけなのかもしれない

ロベルト・アンドー監督『修道士は沈黙する/Le confessioni』イタリア文化会館で行われた試写会で鑑賞

日本では決して生まれることのない社会派ミステリー映画
私的には かなりおススメの1本♪

一筋縄ではいかない
非常に見ごたえのある
知的でスタイリッシュな社会派ミステリー
修道士が核となる物語なので
キリスト教と経済の関係性が理解できていると
この作品、より深く楽しめる

予告動画を初めて目にした時
修道士と経済 永遠なる矛盾
「水と油」の世界を描く結末がいったいどうなるのか
公開されたら絶対観に行こうと思っていた作品は
今月鑑賞した作品の中(この後にもう1本邦画が控えているけど)で、私のベスト1間違いないと記録しておこう

ヨーロッパの豪華演技派俳優らの競演は
目と思考を楽しませてくれたし
「物質主義vs精神主義」を扱っているのにも関わらず
作家&劇作家でもあり、オペラや演劇の演出家でもある
監督のロベルト・アンドー氏の創り出す映像はとても美しく
終始一貫ミステリアスでエレガント
イタリア映画独特のノスタルジックな雰囲気も漂い
シュールな笑いも忘れられてないところもGood!

出演者のアンサンブルはお見事!
この作品の鍵となる人物
疑惑の死を遂げる国際通貨基金の専務理事ロシェを演じたダニエル・オートゥイユ氏、修道士役のトニ・セルビッロ氏の演技はホント素晴らしかった

映画鑑賞後、この作品のコトを考えると
自然に自己を振り返っていることに気がつく
だから
原題は単数形でなく複数形なんだろうと理解

この日は映画終了後に 監督のロベルト・アンドー氏と小沼純一氏のトークもあり、作品についての多くの話を聞けたのはラッキー
これから鑑賞される方もいるのでこの時の話は投稿しませんが、彼の話を思い返しながら今度は劇場で観直してみようと思う

追記:
今回の試写状の美しさは…群を抜いていたなぁ
これ、手元に残したかったT^T

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石山紀子