「ミステリーではなく魔女誕生の物語」ラプラスの魔女 ToToさんの映画レビュー(感想・評価)
ミステリーではなく魔女誕生の物語
日を変えて3回鑑賞した。初回鑑賞後はもやもや感が残ったが、見方を変えた2回、3回目は十分に楽しめた。初回と2回目以降の感覚が全く違う映画となった。
映画館に行く前にレビューをみると賛否両論で評価の差が大きく、特に主演とされる櫻井翔の演技への疑問が多く見受けられた。しかし、彼は俳優ではなくタレント。主演級の他のキャストの方々と並べられ評価されるのは無理があると思いながら見始めるた。そのためか進行役として、大きな違和感を感じなかった。青江教授という現実的な役柄があっていたのであろう。
その他のキャストの方々は、各々の特徴を十分に出して自由に役を演じており、この映画の一つの見どころだと思う。福士蒼汰の演技を映画では初めて観たが、肩の力が抜けたうえでの感情の表現がみごと。豊川悦司の怪演、リリー・フランキーの静の演技など。
もちろん円華を演じた広瀬すずはすばらしい。この映画で演ずるのが最も難しいと思われる円華、その性格は?自身の感情の台詞がない(台詞では謙人にたいする思いだけか)。その円華の性格、感情の変化を表情(特に目)、体の動き、台詞の言い回しで表現し、観客に明確に示してくる(演技を観ることでわかる)。役を的確に理解し、アウトプット、それが強烈に観ているものに届く。やはりすごい。また、福士との共演場面では相乗効果も生じていると感じた。
この映画、ミステリーの雰囲気で始まる。ところが、途中から、円華が走る場面あたりから変化。アクション、SF、劇といろいろな要素が出でくる。加えて前後半でスピード感が違う。初回とまどったのはこの変化であった。初回鑑賞後に気がついたことは、この映画は物語、あくまで魔女誕生のお話。そうすると2回3回と非常におもしろく観られた。多少の矛盾は気にならなくなる。物語を楽しめばいいだけと思う。
全体では、これだけの多くの内容をよく2時間に収めたなと思う。
原作にはない場面も含めて映像も私は好きである。特に後半のスピード感の変化(円華の走りから始まる)から、廃墟の館でのシーン、そしてラストの街角のシーン、主題歌とつながるところが素敵。
ところで、この映画は魔女が誕生(円華の覚悟と自覚)したところで終わる。この後の魔女の活躍は。原作者の東野圭吾さん次第ではあるが、なんでもありのように思える。ミステリー、アクション、ホラー、SF、ファンタジー、哲学的、恋など、またそれらの幾つかを混ぜた内容。いずれでも広瀬すず演じる魔女は十分に楽しませてくれるはず。観た後、続編、シリーズ化を期待したいと感じた映画であった。