「サラリーマン・バトル・ロワイアル」サラリーマン バトル・ロワイアル Lymanさんの映画レビュー(感想・評価)
サラリーマン・バトル・ロワイアル
あらすじは邦題そのまんまw
コロンビア郊外に建つグローバル企業のオフィスビルが突如封鎖され、80人の外国人オフィスワーカー達が互いに殺し合いを強制されるよ!シナリオが非常にシンプル!
しかし目新しさはないものの、冒頭で「コロンビア人達は会社に来て早々軍隊に帰らされる」、選ばれた社員達も背景は「異国に飛ばされ閉じ込められ更には追跡装置で管理されている」等、グローバル企業が持つ選民意識や管理社会への皮肉は随所に散見しています。
でもそこまで考え込んで観なくても、ダークで閉塞感のある世界観はバトロワ系映画としての一定の楽しさが充分あったので、デスゲーム欠乏症の方やデスゲーム入門者にはお勧めできます。
(デスゲーム好きには逆に不向きかも。監視・管理社会への皮肉からか「ゲームに乗る」人が少ないので、展開が物足りないと思います)
演技や演出面は、量産型映画にしてはチープさもあまり感じず、よく出来ていると素直に思えました。
(ゴアは質よりテンポ型。パンパン人が死にますが、種類は少ないので期待はNG)
主役マイクやCEOバリーの存在感も際立ってましたが、個人的には脇役テリーの心情表現が頭一つ抜けていた印象です(☆+1)
ただ、伝えたいテーマ性が強すぎたのか、結果として「デスゲーム映画としての面白さ」を自ら抑え込んでしまった感は否めないです
以下【ネタバレ】含む(欠乏症視点の)不満点(☆-4)
舞台を活かしきれない
オフィスビルというユニークな設定にも関わらず、殺害方法のほとんどは「首の爆弾」か「銃」。テンポ重視とはいえ、せめて名有りキャラにはもっと「らしい死に様」を用意して欲しい。訳:もっと環境キルをくれ!
ゲーム性の欠如
爆弾によるペナルティは良いけど、大量に選別する際も主催者の独断なのがゲームとしてつまらない。CEOのバリーさえも対象に「上」の好き勝手に解雇できる比喩なのでしょうが、どうせ選ぶにしても「爆破対象を予告する」などして、社員達を“ゲームに乗らせる”仕掛けが欲しい
疑心暗鬼要素ゼロ
参加者達のほとんどが常に被害者モードで、裏切りも策謀も起こらず、バリー一味以外は終始受け身。これは「上司の命令には逆らえない」社畜的構造の比喩なのでしょうが、バトロワ作品としては致命的。「羊の皮を被った狼」「悪対悪」のような"熱い"構図が存在せず、結局は「バリー vs マイク」の単純な下剋上構図に終始してしまいました。
これではゾンビ映画などの終末映画と展開が大して変わりません
リアンドラの唐突な行動
終盤、リアンドラが爆弾を回収する流れは物語のカギとなりますが、彼女視点の動機や意図が不明瞭です。
バリケードを破壊する事が不可能なのは彼女も知っており、ましてや監視されているので目立った反逆行動は自身の爆弾を起動されて終わりでしょう。
結果マイクがそうした様に彼女も逆襲撃を画策していたとしても、恋人関係にある2人のどちらかの死を既に覚悟したうえでの「自爆テロ的発想」は、終始中立的だった彼女のキャラとしては唐突で不自然でした
総括
映画が伝えようとした社会批判や企業風刺は理解できるのですが、それがバトロワ系ジャンルの“旨味”を潰してしまっているとしか感じなかったです。
デスゲームの魅力は「参加者達が葛藤し、選び、手を汚す事」だと思うので、その自由意思を封じた今作はまるで緊張感が徐々に失われていくようでした
とはいえ、バリーの悪堕ち、唯一上司に明確に逆らった警備員、倫理観に揺れまくった挙句情けなく散ったテリーなど、キャラ立ちは短い尺の中でも意外としっかりしています(☆+1)。
だからこそ余計なテーマ性に縛られているのが勿体なく感じました
私は普通にデスゲームホラーが観たかったんや…