「説明不足・描写不足であり、作品への愛も感じられない。」EUREKA 交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション ブロッコリーさんの映画レビュー(感想・評価)
説明不足・描写不足であり、作品への愛も感じられない。
まだ劇場で一度鑑賞しただけなので見直してみたら変わるかもしれないが、とにかく説明不足・描写不足というのが最初に来る感想だ。
前作アネモネでエウレカはレントンを救うために数多の仮想世界を作り出してきた。そして今作の冒頭ではエウレカの作り出した仮想世界の住人や街が現実世界に移動して来たことが描かれている。
そして現実世界ではいわゆる移民排斥運動が起こる一方で、融和も進み2つの政府は(それぞれの腹の中はともかく)合同の公共事業も行われる程度には友好的な関係のようだ。
この2つの世界間で思惑や目指すゴールの違いがあるのかと思いきや、特にそういった説明や描写はない。ホランドやタルホ、グレッグ博士らは仮想世界側のようだが、今作の黒幕であるデューイがどういう立場なのかわからない。
デューイは仮想世界出身で仮想世界側を裏切るが、それなら現実世界側の合体ロボとかはなんのために居たのか?
次に気になったところはエウレカとアイリスのロードムービーだ。アイリスを狙うデューイから逃れるうちに二人に親子愛、家族愛が芽生えるという設定だが、わがままな子供を育てることで人の愛情を理解するみたいな話はTV版でもうやっているはずだ。それがあったからこそレントンを愛せたはずなのに、話の都合でエウレカが酒と筋トレしか無い堅物ゴリラに描写されていて違和感があった。
クライマックスは地球に落下する巨大宇宙船を人々の力で押し返すア○シズ落としのシーンだが、これまで目立った対立のなかった2つの勢力がいつの間にか手を取り合って落下阻止のために自爆特攻を仕掛けていく。
最初に書いたが今回は地球を壊そうとするデューイ達vsそれ以外という構造になっているため、対立した人々が手を取り合うと言っても元々そうじゃんという感想になる。もっと移民排斥運動等を描写し2つの世界間の対立を写していれば(どこかで聞いた陳腐な筋書きなのはともかく)形にはなっていたはずだ。
現実世界側の合体ロボを操る少女たちはろくに名前も紹介されないまま、最後の仕事をしますか、みたいなことを言って特攻していく。
ホランドは作中での立場(おそらく仮想世界側の正規の軍人であり、ゲッコーステイトは作っていない)がいまいちわからないままポッと出てきて、新月光号(という名のただのツンツンした飛行機)に乗り、ムーンドギー・ギジェットとともに身重のタルホを家に残したまま死亡フラグビンビンで出撃する。
新月光号には一通りのメンバーがいるかと思いきや、上記の3人のみでマシュー、ハップなど魅力的な面々は居ない。セリフがないとかではなく他の乗組員もモブにすり替わっている。
他の過去キャラは10歳ほど年をとっているのになぜか青臭いホランドは特に逡巡するでもなく自爆特攻する。ちなみにクライマックスでは一切LFOには乗らない。
ラストでは謎パワー(アイリスの力で夢が実現した?)でレントンとエウレカが再開して巨大宇宙船を消し、二人は幸せなキスをして終了。
見ている時は封印されたニルヴァーシュを開放すると一緒にレントンが出るんだろうな、そっから力を合わせてラスボスを倒して大団円かな、と予想しながら見ていた。前作アネモネではラストで一瞬だけ出たのみだったので、主人公だし今作こそはと思っていたものの今回もほぼ出番なし。再開できたことだけは2人にとってよかったと思うがもっと活躍させてほしかった。
説明的なセリフを避けること自体はいけないことではないが、そのためには映像で描写し、必要な情報がわかるようにすべきだと思う。
描写不足に関しては尺の問題もあったのかもしれないが、それならほぼ使いまわしだった1作目を端折るべきだったと思う。
TV版は忘れて別物としてみるべきという意見が前作アネモネから見受けられるが、それならば何故エウレカセブンの名前やキャラクターを使ったのか?
別物としてみても破綻しているところは多く、エンタメとしても盛り上がりに欠ける展開だったと言わざるを得ない。
ハイエボ3部作は全体的に使いまわしや練っていない脚本、魅力のないメカデザインなど制作陣のやる気の無さを感じてしまう出来だった。エウレカシリーズはTV版1期以外はどの作品も不評が多いがそれでも作られ続けてきたのはパチンコマネーのおかげだろう。パチンコのために駄作が作られ思い出が汚されていくことがこれで終わってくれるのであれば、ファンとしては良かったのかもしれない。