「庵野秀明という呪縛を乗り越えた京田知己。シン・エウレカセブン」ANEMONE 交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション ポン太さんの映画レビュー(感想・評価)
庵野秀明という呪縛を乗り越えた京田知己。シン・エウレカセブン
これまで京田監督を追ってきた人間ならば意味の伝わるタイトルにしてみた。間違いなく京田知己最高傑作。これまでのエウレカシリーズを見ていない人でも楽しめる。とにかく飽きさせない。純粋に一本の映画として面白かった。
他の方も書かれてるが中盤以降の、全てが収斂し昇華されていく快感はぜひ劇場で味わってほしい。エウレカセブンはハイエボリューションした。
映像面
キャラの心情とアクション、カメラの置き方や動かし方、それに音楽がシンクロするとこんなに気持ちのいい映像になるんだなぁという印象。とにかく映像が気持ち良い。
サーカスも柿田爆発も最高。ニルヴァーシュXの強さがよく表されていた。グラフィニカ篠原章郎氏率いる3Dパートも素晴らしい。ロボットを手書きで、キャラ(ある特定の)を3Dでえがく事に意味を持たせている。
アネモネとエウレカが2人で重い扉をこじ開けるシーン、ただキャラのアクションと心情、これまでの全てが重なる熱いシーンというだけでなく、「アニメーション」の未来をセルルック3Dがこじ開ける構図にもなっていて製作陣の矜持を感じる。ガリバー大量発生シーンの「漫画映画的な」演出を3Dでやることの意義。そしてラストの上昇感、浮遊感、着地感(と彼の姿)。不思議な多幸感に包まれる。ありがとうボンズ。ありがとうグラフィニカ。ありがとう監督。
物語面
エウレカセブンは元々メディアミックスコンテンツとして売り出された。TVアニメ、漫画、ゲーム、小説などなど。それらを全て包括して未来へ歩む。
小清水さんの巧みな演じ分けもあって、今回のアネモネはとても感情移入できる現代的で快活な少女。アネモネはある選択を迫られ、未来を選ぶ。アネモネがドミニクと「ダイブ」し、ガリバーと「上昇」する新たなバレエメカニックと、深く沈む闇レカ(笑)をアネモネが救い上げ2人で「上昇」する、新たなモーニンググローリー、これら2つが世界を救う。
ダイブと上昇、縦の物語構造がフレームサイズによる演出やキャラクターの心情と完全にマッチしていた。今回度々出てくる「扉」、ダイブの入り口として機能するがそれの持つ意味性が物語が進むごとに変化していくのもうまい。
エウレカセブンの事を多少は知っている人なら、当時エウレカセブンがエヴァを越えようとして作られた事(そして恐らくは失敗したであろう事)はご存知だと思う。庵野監督は自らを「コピー世代」と揶揄し、京田監督は自らを「コピーのコピー世代」と揶揄した。エヴァ新劇場版公開時の庵野監督のコメント「この十年エヴァより新しいアニメはありませんでした」。どうやってもエヴァの二番煎じになってしまうエヴァの呪縛。今作によって京田監督は、庵野監督への愛を表明しながらも庵野監督の呪縛エヴァの呪縛あらゆる呪縛から解き放たれて、「エヴァの向こう側」を見せてくれた。エウレカセブンに無いとされていた核が、間違いなく備わった。
まったく新しいエウレカセブン。この作品に関わった全てのスタッフキャストに感謝です。次回が待ち遠しい。